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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 97(4): 509-512 (2025)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2025.970509

みにれびゅうMini Review

グアニン四重鎖を核としたαシヌクレイン凝集による神経変性機構The mechanism underlying neurodegeneration by αSynuclein aggregation initiated by G-quadruplex

熊本大学発生医学研究所ゲノム神経学分野Department of Genomic Neurology, Institute of Molecular Embryology and Genetics, Kumamoto University ◇ 〒860–0811 熊本市中央区本荘2–2–1 ◇ 2–2–1 Honjo, Chuo-ku, Kumamoto 860–0811, Japan

発行日:2025年8月25日Published: August 25, 2025
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1. はじめに

生命現象を担うタンパク質は立体構造を形成し機能を発揮するが,「天然変性タンパク質」は特定の立体構造を持たず揺らいだ不規則な構造をとり,変性状態で機能する.これら天然変性タンパク質の中でもαシヌクレイン(αSynuclein:αSyn),Tau, FUS等のプリオン性タンパク質の凝集・伝播は神経変性疾患の病態要因となる1).プリオン性タンパク質は,何らかの未知の要因でミスフォールディングによる凝集体を形成し,これら凝集体が正常タンパク質をプリオンのように連鎖的に凝集し続け,細胞間伝播する1).近年,プリオン性タンパク質の凝集体形成は,分子クラウディングの一つである液-液相分離(liquid–liquid phase separation:LLPS)を介して誘導されることが示唆されているが2),その基盤となる分子メカニズムは不明である.

αSynはパーキンソン病やレビー小体型認知症に代表されるシヌクレイノパチー患者脳の特徴的な病理所見である「細胞内凝集体」の主要構成タンパク質である.αSynは正常な神経細胞ではシナプス小胞と細胞膜の融合に関与するSNAREタンパク質複合体としてシナプス前終末に局在する.一方,シヌクレイノパチー患者脳では何らかの異なる分子と複合体を形成し,細胞内にアミロイド凝集体を形成する.近年,αSynアミロイド凝集体はLLPSを介して形成されることが報告されたが,αSynタンパク質単体でのin vitro研究にとどまっており3)in vivoでの病態発症メカニズムとの関与は不明である.本稿では,筆者たちが発見した神経変性メカニズム「RNAグアニン四重鎖(RNA G-quadruplex:G4RNA)によるαSynの凝集」について紹介する.

2. αSynはG4RNA特異的に結合し,ゾル-ゲル相転移する

まず我々は,αSynが神経細胞内で実際にLLPSを介して凝集するか検討した.シヌクレイノパチー患者死後脳ではリン酸化αSyn(pS129)陽性凝集体がみられ,pS129はαSyn凝集マーカーとして一般的によく用いられている.αSynアミロイド線維(preformed fibril:PFF)をマウス神経細胞に処置すると,時間経過に伴いシヌクレイノパチー患者と同様のpS129陽性凝集体が細胞体にみられることが知られている.一方,pS129凝集体が形成される前のαSynの細胞内動態については不明であった.ヒトαSyn PFFをマウス培養神経細胞に処置し,マウスαSyn特異的抗体を用いてαSynの動態を検討したところ,αSynはまずDCP1a陽性のRNA顆粒(P-body)に集積し,その後pS129陽性凝集体を形成することがわかった.P-bodyを含む「非膜オルガネラ」は,多価の分子間相互作用によるLLPSによって形成されることが知られている.αSynを含むRNA顆粒がLLPSによって形成されているか確認するために,mCherryタグつきαSynを用いて蛍光退色後回復測定(fluorescence recovery after photobleaching:FRAP)による解析を行った.pS129陰性の顆粒状αSynは,退色後の蛍光が回復することからLLPSを介した流動性のある液滴であることがわかった.一方,pS129陽性αSynは退色後の蛍光が回復せず流動性が低下した凝集体であった.これらの結果から,αSynは細胞内においてLLPSを介して濃縮され,その後に流動性のない凝集体(ゾル–ゲル相転移)を形成することが示された.

LLPSはタンパク質や核酸が多価の分子間相互作用によって会合している状態(液滴)であることから2),αSynの物性にタンパク質またはRNAが影響を与えるか検討した.マウス神経芽細胞腫から抽出した細胞由来タンパク質もしくは細胞由来RNAをin vitro分子クラウディング条件下において精製αSynと混合した.細胞由来タンパク質はαSyn液滴に影響を与えなかったが,細胞由来RNAを加えるとαSynはゾル–ゲル相転移を起こした.αSynのRNA結合性は不明であったことから,RNA-Bind-n-seqを用い4),ランダム配列RNAからαSynが結合するRNA配列を同定した.その結果,αSynはグアニンが豊富かつ連続した一次配列を持つRNAに結合することがわかった(図1A).このようなグアニンが連続した配列を持つ一本鎖RNAでは,核酸高次構造の一つであるG4RNAが形成される5, 6).αSynのRNA結合性にG4RNAが寄与するか検討するためにゲルシフト解析を行った.代表的なG4RNAであるテロメアRNA(UUAGGG)4,G4構造を形成しない変異型テロメアRNA(UUACCG)4,ミスマッチヘアピン構造(CAG)8,ポリアデニン(AAA)8を用いた.結果として,G4RNAのバンドはαSyn濃度に依存し上方にシフトするが,ほかのRNA構造では移動はみられなかった(図1B).つまり,αSynはG4RNA特異的に結合することを明らかにした.さらに,G4RNAを加えてαSyn液滴を観察すると,予想どおりαSynはゾル–ゲル相転移した(図1C).これら結果は,G4RNAがαSyn凝集を誘起するキーファクターであることを示している.

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図1 G4RNAはαSynゾル–ゲル相転移を促進する

(A) αSynはグアニンが豊富かつ連続したRNA配列に結合する.このような配列ではG4構造が形成される.(B)αSynはG4RNA特異的に結合する.(C)G4RNAが加わることでαSynのゾル–ゲル相転移を促進する(上図).G4RNA-αSyn複合体は退色後の蛍光回復がみられないことから流動性が低下した凝集体であることがわかる.図は文献9より引用した.

3. G4RNAの自己会合がαSyn凝集を誘導し,神経変性を誘導する

次に,細胞ストレス時のG4RNA動態について検討した.結果として,αSyn PFFを処置したマウス培養神経細胞において,S129凝集体形成に先立ちG4RNAが増加・会合し,最終的にG4RNAはαSynと共凝集することがわかった.αSynとG4RNAの共凝集体はパーキンソン病患者死後脳でも確認された.興味深いことに,G4RNAの増加・会合はカルシウムイオノフォアであるイオノマイシン処置によって誘導された.in vitroにおいて,カルシウムイオン(Ca2+)濃度依存的にG4RNAの自己会合による相分離が亢進し,Ca2+存在下ではG4RNAによるαSynのゾル–ゲル相転移が強く誘導された.また,αSyn PFF処置後の神経細胞ではカルシウムホメオスタシスが破綻し,Ca2+濃度が高く保たれていることを確認した.これらは,Ca2+によるG4RNA自己会合がαSynゾル–ゲル相転移の起点になることを示唆している.

続いて,細胞内においてG4RNAの自己会合がαSyn凝集を誘導するか検討した.細胞内でG4RNAの自己会合を誘導するために,光照射によりG4RNA会合を誘導する実験系を構築した(OptoG4システム;図2A).G4RNA形成配列にバクテリオファージMS2のファージゲノム・ステムループ構造MS2配列を付加したコンストラクト,およびMS2ステムループ構造特異的に結合するMS2コートタンパク質(MCP)に光照射により自己会合するCry2oligoを付加したコンストラクトを細胞に発現させて青色光(480 nm)を照射すると,細胞内でG4RNA自己会合を誘導できる.OptoG4システムをマウス培養神経細胞に発現させ青色光を照射すると,G4RNA会合に伴いαSynが共凝集し,興奮性神経伝達が障害された(図2B).これら神経機能障害はG4構造を形成しないRNA配列の会合ではみられなかった.次に,in vivoでの検討を行うために,アデノ随伴ウイルスを用いてマウス黒質ドパミン神経細胞特異的にOptoG4システムを発現させ青色光を照射した.青色光を照射したOptoG4システム発現マウスは時間経過に伴い,パーキンソン病様の運動機能障害がみられた(図2C).脳スライスを作製してドパミン神経細胞を観察したところ,培養神経細胞の実験と同様に会合したG4RNAとαSynが共凝集し,ドパミン神経細胞の変性・脱落が確認できた.以上の結果から,G4RNAの自己会合がαSyn凝集の起点となり,神経変性を誘導することが示された.

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図2 G4RNAの自己会合はαSynを凝集させ,神経変性を誘導する

(A) OptoG4システムの概略.(B)神経細胞にOptoG4を発現させ光照射すると,内在性のαSynが凝集し(左),自発性興奮性後シナプス電流(sEPSC)の低下が見られる(右).(C)マウス黒質ドパミン神経細胞OptoG4システムを発現させ光照射すると,内在性αSynが凝集し,tyrosine hydroxylase(TH)陽性のドパミン神経細胞が脱落する(左).ドパミン神経変性に伴い,光照射期間依存的にローターロッド試験において運動機能障害がみられる.図は文献9より引用した.

4. G4作用薬はシヌクレイノパチー発症を予防しうる

最後に,G4作用薬のシヌクレイノパチー様神経変性に対する薬効について評価した.筆者たちは,生体内ポルフィリンであるプロトポルフィリンIX(protoporphyrin IX:PPIX)がG4構造に結合し,構造を不安定化させることを見いだしている7, 8).PPIXはG4構造に結合することでCa2+依存的なG4RNAのLLPSを抑制し,G4RNAの自己会合によるαSynのゾル-ゲル相転移を阻害することを見いだした.さらに,体内でPPIXを産生する5-アミノレブリン酸をαSyn PFF注入マウスに経口投与すると,αSyn凝集・伝播を抑制し,行動障害を改善することができた.これらの結果は,G4作用薬が異常なG4RNA形成・会合を抑制することでαSyn凝集を抑制し,神経変性を予防できる可能性を示唆している.

5. おわりに

本稿では,G4RNAがαSynゾル–ゲル相転移の起点となり,シヌクレイノパチー発症に寄与することを紹介した(図39).本稿では割愛するが,G4RNAがαSynのN末端に結合しゾル-ゲル相転移を誘導すること,シナプス関連タンパク質をコードするmRNA上のG4構造がαSyn凝集に寄与することも明らかにした.現在,核磁気共鳴分析法による構造解析によってG4RNA-αSyn複合体の構造が解かれつつある10).また,G4RNAはαSynだけではなくTauのゾル–ゲル相転移にも寄与しており11),多くの孤発性神経変性疾患発症にG4構造の関与が示唆される.今後,G4RNAによる神経変性機構について疾患間における「共通性」および「特異性」を明らかにするとともに,G4構造を標的とした新規治療法や予防法についても精力的に研究を進めていきたい.

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図3 G4を核としたシヌクレイノパチー発症機序の仮説

通常,αSynは単量体で存在し機能している.細胞ストレスにより細胞内カルシウムホメオスタシスが破綻することでG4RNAが増加・会合する.その結果,αSynがLLPSを介してゾル–ゲル相転移することで凝集体が形成される.αSyn凝集に関わるG4RNAの多くがシナプス関連分子であり,これらmRNAとαSynが共凝集することでタンパク質翻訳が阻害されシナプス機能を障害する.最終的に,神経変性が引き起こされ,神経変性疾患の発症を引き起こすと考えられる.G4構造の異常形成を抑制することでαSyn凝集を抑制し,神経変性を予防できる可能性がある.

引用文献References

1) Jucker, M. & Walker, L.C. (2013) Self-propagation of pathogenic protein aggregates in neurodegenerative diseases. Nature, 501, 45–51.

2) Ryan, V.H. & Fawzi, N.L. (2019) Physiological, pathological, and targetable membraneless organelles in neurons. Trends Neurosci., 42, 693–708.

3) Ray, S., Singh, N., Kumar, R., Patel, K., Pandey, S., Datta, D., Mahato, J., Panigrahi, R., Navalkar, A., Mehra, S., et al. (2020) α-Synuclein aggregation nucleates through liquid–liquid phase separation. Nat. Chem., 12, 705–716.

4) Lambert, N., Robertson, A., Jangi, M., McGeary, S., Sharp, P.A., & Burge, C.B. (2014) RNA Bind-n-Seq: Quantitative assessment of the sequence and structural binding specificity of RNA binding proteins. Mol. Cell, 54, 887–900.

5) Asamitsu, S. & Shioda, N. (2021) Potential roles of G-quadruplex structures in RNA granules for physiological and pathological phase separation. J. Biochem., 169, 527–533.

6) Kharel, P. & Ivanov, P. (2024) RNA G-quadruplexes and stress: Emerging mechanisms and functions. Trends Cell Biol., 34, 771–784.

7) Shioda, N., Yabuki, Y., Yamaguchi, K., Onozato, M., Li, Y., Kurosawa, K., Tanabe, H., Okamoto, N., Era, T., Sugiyama, H., et al. (2018) Targeting G-quadruplex DNA as cognitive function therapy for ATR-X syndrome. Nat. Med., 24, 802–813.

8) Asamitsu, S., Yabuki, Y., Ikenoshita, S., Kawakubo, K., Kawasaki, M., Usuki, S., Nakayama, Y., Adachi, K., Kugoh, H., Ishii, K., et al. (2021) CGG repeat RNA G-quadruplexes interact with FMRpolyG to cause neuronal dysfunction in fragile X-related tremor/ataxia syndrome. Sci. Adv., 7, eabd9440.

9) Matsuo, K., Asamitsu, S., Maeda, K., Suzuki, H., Kawakubo, K., Komiya, G., Kudo, K., Sakai, Y., Hori, K., Ikenoshita, S., et al. (2024) RNA G-quadruplexes form scaffolds that promote neuropathological α-synuclein aggregation. Cell, 187, 6835–6848.e20.

10) 陳伊然,杤尾豪人,矢吹悌,塩田倫史(2024)αシヌクレインとG4RNAの相互作用の分子メカニズム.第47回日本分子生物学会年会,1P-218.

11) Yabuki, Y., Matsuo, K., Komiya, G., Kudo, K., Hori, K., Ikenoshita, S., Kawata, Y., Mizobata, T., & Shioda, N. (2024) RNA G-quadruplexes and calcium ions synergistically induce Tau phase transition in vitro. J. Biol. Chem., 300, 107971.

著者紹介Author Profile

矢吹 悌(やぶき やすし)

熊本大学発生医学研究所 准教授.博士(薬科学),東北大学,2015年.

略歴

1987年福島県生まれ.2010年東北大学薬学部卒業.15年同大学院薬学研究科博士課程修了,博士(薬科学).15年東北大学大学院薬学研究科助教,19年10月熊本大学発生学研究所助教,23年12月より現職.その間,18年4月~19年4月カルガリー大学医学部日本学術振興会海外特別研究員.

研究テーマと抱負

現在,「核酸高次構造と神経変性疾患」をテーマに研究を行っている.神経変性メカニズムを明らかにし,その予防法や治療法の開発に貢献したい.

ウェブサイト

http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/genomic_neurology/

https://researchmap.jp/y.y-u_o_c

趣味

釣り,バー巡り,家族旅行.

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