液–液相分離による浸透圧ストレス感知機構

Kengo Watanabe; 渡邊謙吾

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2025.970646

液–液相分離による浸透圧ストレス感知機構Osmotic stress-sensing mechanism via liquid–liquid phase separation

渡邊謙吾^1,2Kengo Watanabe^1,2

¹ 徳島大学大学院医歯薬学研究部メディカルAIデータサイエンス分野Department of Medical Artificial Intelligence and Data Science, Graduate School of Biomedical Sciences, Tokushima University ◇ 〒770–8503 徳島市蔵本町3–18–15 ◇ 3–8–15 Kuramoto-cho, Tokushima 770–8503, Japan

² 徳島大学フォトニクス健康フロンティア研究院分子・システム生命医科学部門Laboratory of Molecular & Systems Biomedical Science, Institute of Photonics and Human Health Frontier, Tokushima University ◇ 〒770–8503 徳島市蔵本町3–18–15 ◇ 3–8–15 Kuramoto-cho, Tokushima 770–8503, Japan

発行日：2025年10月25日Published: October 25, 2025

細胞膜は半透膜の性質を有するため，細胞内液と細胞外液の浸透圧差は細胞体積を強制的に変化させ，恒常性維持を乱すストレスとなる．この根本的な「浸透圧ストレス」に対する細胞応答機構は数十年以上にわたって研究され，イオンチャネルなどエフェクター分子に関して多くの知見が蓄積している．一方，特に哺乳類細胞における浸透圧ストレス感知機構については，さまざまなセンサー分子が断片的に提唱されており，いまだ不明な点が多い．しかし近年，液–液相分離という物理化学現象が，浸透圧ストレス感知機構を体系的に理解する上でブレイクスルーになりつつある．そこで本稿では，細胞の浸透圧ストレス応答機構の既存知見を概説し，生化学と数理科学の融合研究例を詳述する形で，本分野における液–液相分離という新しい視点を紹介する．

生化学 SEIKAGAKU
Journal of Japanese Biochemical Society

総説Review

液–液相分離による浸透圧ストレス感知機構Osmotic stress-sensing mechanism via liquid–liquid phase separation