
我々は何処から来たのか,そして何処へ行くのか?地球上の生命現象を俯瞰的に考察するForeword
一般財団法人北里環境科学センター名誉顧問
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太陽系は,46億年前に誕生し,8億年の化学進化の後に,地球上に生命が誕生した.生命は,地球環境の変化に対応しながら進化を遂げ,現在の地球上には,数百万から数千万種の生物種が生息しているという.人類(ホモ・サピエンス)は,20万年前に誕生し,およそ1万年前に文字を発明し,文明を誕生させた.現在は82億人を超える人類が近代文明社会の中で,目先の利害に翻弄されながら,絶望的な戦争に明け暮れている.現状の地球環境に見切りをつけて,火星への移住計画も取り沙汰されている.我々は何処から来て,何処へ行こうとしているのだろうか.地球上の生命現象を俯瞰的に考察してみたい.
38億年前に,地球上に最初の原始的な微生物が出現し,25億年前に光合成バクテリアが大量の酸素を発生し始め,12億~18億年前にはシアノバクテリアが登場し,地球環境を大きく変えた.4億~5億年前には陸上植物が登場し,様々な進化の過程で地球を栄養豊かな環境に変えていった.その後に誕生した植物や動物も互いに影響し合いながら,進化の道を辿ってきた.生物が死ぬと,その死骸は様々な化学反応により分解され,最終的に環境に還り,環境を更に肥沃な土壌・海洋・大気に変えた.分解産物の種々の分子は,新しく生まれる生物に取り込まれ,利用されていった.言い換えると,過去の全ての生物は,環境から生まれ,死ぬと環境に還り,未来の生物の一部分となって蘇る.個々の生物は,地球環境の中で,過去の生物と繋がっており,さらに未来の生物と繋がる運命にある.地球上の生命現象は,地球上の原子・分子の組み替えリサイクルシステムと考えることができる.
個々の生物にとって地球環境は,切っても切れない関係にある.全生物の立場から見ると,地球環境そのものが生命現象の一部であり,地球は時空を超えた高次元巨大環境生命体(宇宙船地球号)と考えることができる.地球と生物の歴史を踏まえて判断すると,現時点の人類は火星に移住することは不可能であり,地球環境で生き抜く覚悟を決めなければならないと思う.
現在の人類は,目先の利己的な利益のために,醜い争いを繰り返しているが,早々に戦争を止め,「宇宙船地球号」の構成員として,地球上の全ての生命体とバランスを保ちながら共存する道を探るべきである.
当学会は,昨年,創立100周年を迎えている.宇宙規模で地球上の生命現象を捉え,文明社会に対し,生命科学的視点で,恒久的な平和を実現するためのメッセージを発信する立場にあると思う.
私は,定年退職後,「宇宙生命哲学」(日本脂質生化学会ウェブサイト,“脂質の窓”参照)という概念を社会に発信してきた.この哲学の根幹をなす考え方をまとめると,次のようになる.
現時点で私が考えている素敵な地球人は,「国家・人種・民族・宗教・性別・貧富の差・文化・文明の壁を越えて仲良くし,人権を尊重し,民族の多様性を尊重し,生物多様性を尊重し,人類以外の生物も大切にする.戦争をしない,できる限り水や空気や土壌を汚さない,生活を楽しむ,そして,自分の心の宇宙を,広く,深く,豊かなものにする努力を死ぬまで続ける人」だと思う.
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