Ca2+/カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)は長期増強現象に必須なキナーゼ として知られてきたが,CaMKIIが12量体構造をとることやシナプスで最多のタン パク質である意義は謎であった.我々は,CaMKIIが液‒液相分離を起こすことがそ の機能の本質ではないかと考えた.
プロリンは,タンパク質の構成成分としてだけでなく,多種多様な機能(活性酸素 種レベルやリボファジー,細胞寿命の制御など)を有しており,きわめて重要なア ミノ酸である.本稿では,筆者らが明らかにしてきたプロリンの生理機能と代謝調 節機構について概説する.
体節形成過程ではHes7の発現振動が分節時計として機能し,神経発生過程ではHes1 の発現振動によって神経幹細胞が活性化される.発現振動は,ネガティブ・フィー ドバックにかかる時間遅れや細胞間のカップリングにかかる時間遅れに依存する.
メバロン酸経路はイソプレノイドの生合成前駆体供給経路として古くからよく知ら れた代謝経路である.古細菌を主な対象とした研究により近年見いだされた複数の 変形経路,特に大部分の古細菌に保存された「古細菌型」メバロン酸経路について 解説する.
一次繊毛は,細胞外環境のセンサーとして働く細胞小器官である.一次繊毛を覆う 細胞膜には,他の領域に比べて,コレステロール含量が高く,特異な脂質組成を示 す.本稿では,繊毛コレステロールの生理的および病理的意義について紹介する.
細胞外における異常タンパク質の蓄積はさまざまな疾患の発症を引き起こすため, それらの分解は非常に重要である.本稿では,我々が最近発見した哺乳類細胞外 シャペロンによる細胞外異常タンパク質の分解機構を概説する.
A型インフルエンザウイルスに対して,強い抗ウイルス活性を示す4価型ペプチド を同定した.本ペプチドは新生ヘマグルチニン(HA)に結合後,特殊オルガネラの 形成を誘導し,そこにHAを隔離する.本オルガネラは新たな生体防御機構と位置 づけられる.
タンパク質複合体は,それぞれのサブユニットの量比が定まっているので,必然的 に,複合体に入れない,みなしごサブユニットが生じることとなる.我々は,哺乳 動物細胞のサイトゾルにおける,みなしごタンパク質の品質管理因子としてUBE2O を発見した.
ケトン体は脂肪酸から産生され脳のエネルギー源となるが,さまざまな脳機能調節 作用を持つことが知られている.本稿では,特に睡眠調節作用に焦点をあて,脳内 ケトン体代謝と睡眠の深さ・眠気の調節との関連性について,筆者らの知見を織り 交ぜながら紹介する.
脳内免疫細胞「ミクログリア」が脳機能発揮に果たす役割や,そのメカニズムに注 目が集まっている.我々は,ミクログリア機能の制御が自閉スペクトラム症(ASD) の治療につながる可能性を示した.
細菌が細胞外に生産する膜小胞は細胞間コミュニケーションなど多様な生理機能を 有する.膜小胞は機能性ナノ粒子開発のプラットフォームとしても注目されている. 本稿では特定のタンパク質が選択的に膜小胞に積み込まれるメカニズムについて紹 介する.
多糖アルギン酸とペクチンを資化するグラム陰性細菌Sphingomonas sp. A1株は,側 毛型フラジェリンを含む線維からなる極単べん毛を形成し,多糖走化性を示す.本 稿では,A1株の特異なべん毛形成と多糖走化性に関わる分子機構を概説する.
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