我々宿主と共生する腸内細菌は生理作用を持ち,宿主のホメオスタシスを保っている.しかし,ひとたび,そのバランスが崩れると,さまざまな病態につながることが明らかになってきた.本稿では,腸内細菌が関わるがんの発症や進展機構について述べる.
翻訳開始因子eIF4Aはタンパク質合成に必須の因子である.近年,eIF4Aを標的とする天然化合物が,抗がん作用など薬理学的に有用な活性を発揮することがわかってきた.本稿では,そのメカニズムを含めた最新の知見を概説する.
本稿では,クロマチンタンパク質PHF6による造血幹細胞の制御と,その制御異常に起因する造血器腫瘍の発症に関して,最近の白血病ゲノム解析とマウスモデルに関する知見を概説する.
近年,エンハンサー領域から非コードRNAの転写が大規模に起こることが相次いで報告されている.しかしその生物学的意義は,ほとんど理解されていない.我々は,エンハンサー内部からの非コードRNAの転写が「転写ハブ」の形成を制御する新規機構を発見した.
「幅広い種で保存されるコア構造と真核生物が獲得したサブユニットとの間にアロステリック阻害部位が存在する」という仮説をもとに,タンパク質構造解析と計算科学・生化学実験を集学的に組み合わせ,病原菌特異的な抗菌剤の創出に成功した.
寄生原虫,赤痢アメーバ硫酸代謝は含硫脂質代謝に特化し,産物であるコレステロール硫酸とfatty alcohol disulfatesはそれぞれシスト形成,栄養体増殖に必須である.そのため含硫脂質代謝は新規抗アメーバ症薬開発の標的分子となりうる.
二成分毒素は細胞内で働くタンパク質毒素とそれを細胞内に輸送するタンパク質膜透過装置からなる.食中毒の原因菌ウェルシュ菌がつくりだすイオタ毒素も二成分毒素である.タンパク質膜透過装置の構造と機能について概説する.
脳機能を支える脳内免疫細胞ミクログリアは,他の神経系細胞とは起源が異なり卵黄嚢で誕生する.その後脳に侵入するが詳細なメカニズムは不明である.本稿では,ミクログリアの脳定着プロセスに関する最新研究を紹介し,性質多様性との連関について議論する.
膜の脂質生物学において,核膜は他のオルガネラ膜の後塵を拝している.最近我々は,両親媒性ヘリックスにより脂質環境を認識する核膜タンパク質およびそのプロテアソーム分解との連関を発見し,核膜の脂質の認識機構とその機能へのヒントを提示した.
タンパク質と脂質の生合成を行う小胞体は,生体ホメオスタシス維持に中心的な役割を演じている.低酸素ストレスで産生される細胞障害性脂質を小胞体内のグルコース転移酵素により選択的に糖化することで,小胞体ストレスから回避するシステムが存在する.
超解像顕微鏡などの技術の発展により,細胞分裂タンパク質FtsZの機能と構造に関する研究が飛躍的に進んでいる.最近,クライオ電子顕微鏡によって明らかとなったFtsZの直線型および曲線型フィラメントの高分解能構造について紹介する.
ミトコンドリア分解経路の一つにマイトファジーがある.主に酵母の解析から,マイトファジーは,ミトコンドリア上で脂質膜を伸長させてミトコンドリアを囲む過程と,膜小胞内に収納可能な断片を作るミトコンドリア分裂の過程とからなることがわかってきた.
エンドサイトーシス経路は複数存在し,これらはすべて初期エンドソームに集約され,そこで選別されると考えられてきた.本稿では,個々のエンドサイトーシス経路が独立に制御されているという新しいモデルと神経発生におけるその意義について概説する.
動物の皮膚と同様に,植物の表皮は生物個体の表層を覆うように形成される組織である.本稿では,脂質を介したユニークな位置情報伝達機構を介して,植物体の最外層に表皮が正しく分化する分子機構について概説する.
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