ユビキチン分子は,あらゆる生物学的効果を制御する.ユビキチンは,酵素により標的基質をさまざまなユビキチンコードで修飾する.このさまざまなコードが,どのように細胞内シグナルを制御するのかについて,炎症制御に着眼し,最新の知見と考察を述べる.
グルコースを大量消費する特殊なエネルギー代謝により,悪性化したがん組織は酸 性化している.リソソームを細胞膜と融合して内腔に蓄えたH+などを放出することで,酸性化した環境でがん細胞が選択的に増殖する新たな仕組みについて述べる.
遺伝子発現の制御において重要な役割を果たすメディエーター複合体は,転写伸長 複合体SECとLECを異なる遺伝子領域にリクルートすることによって,それぞれ mRNAにポリA鎖のある遺伝子とポリA鎖のない遺伝子の発現を制御することが明らかとなった.
IL-7は胸腺,骨髄,リンパ節などのストローマ細胞から産生され,リンパ球の分化と機能を支えており,免疫系の恒常性維持を担うサイトカインである.我々はIL-7受容体シグナルの制御とT細胞における機能について重要な知見を明らかにしたので紹介する.
in-cell NMR法は細胞内環境下におけるタンパク質の構造を原子レベルで観測可能な唯一の方法である.本稿では我々がこれまでに行ったin-cell NMR法の手法開発とそれを用いた細胞内タンパク質のリアルタイム観測について解説する.
リン脂質フリッパーゼはATP加水分解エネルギーと共役してリン脂質を脂質二重層の外葉から内葉へと反転移層するP4-ATPaseである.本稿ではアポトーシスに関わるヒト細胞膜ホスファチジルセリンフリッパーゼATP11Cの立体構造とリン脂質輸送機構について概説する.
冬眠は哺乳類に共通の遺伝子の発現や機能を冬眠用に再調整することにより制御されていると考えられているが,いまだ謎に包まれている.本稿では,シマリスの遺伝子発現が冬眠に伴ってどのように制御されているかという観点から冬眠研究について解説する.
重篤な肺炎の起因菌であるレジオネラは感染細胞内で増殖することにより病原性を発揮する.本稿では,宿主ユビキチン系を操作することで,レジオネラがどのように小胞輸送経路を乗っ取り増殖のためのニッチを形成するかについての最近の知見を紹介する.
卵管と卵管液は卵子や受精卵が最初に経験するマイクロ環境である.卵管はこれまで単なる精子や受精卵の輸送器官だと思われてきたが,卵管液中のアミノ酸やタンパク質,エクソソームを使って,受精や初期胚発生を積極的に制御していることが明らかになった.
Type III CRISPRシステムを構成しているエフェクター分子であるCsm,および,Cmr複合体は,RNase活性,DNase活性,および,環状オリゴアデニル酸の合成活性を示す.それらの活性化におけるCRISPR RNAの役割が明らかとなった.
結晶性セルロースを効率よく分解できるセロビオヒドロラーゼでは,基質を連続的(プロセッシブ)に分解するために,進化の過程でサブサイトの片側が伸長されて非対称になり,ループによるトンネル化がされるという,タンパク質レベルの収斂進化が起こっていた.
生命に必須のtRNA成熟化に関わるリボヌクレアーゼPには,リボザイム型とエンザイム型という異なる二つの形態が存在し,まったく同じ酵素反応を担っている.本稿では,リボヌクレアーゼPの多様性やその構造基盤を我々の最近の研究成果を中心に紹介する.
ADPリボシル化酵素の機能の多様さは,基質およびADPリボースを付加する標的分子の多様さに由来する.本稿では基質複合体構造をもとに,ADPリボシル化酵素が標的を正確に認識する仕組みを紹介する.
真核細胞にとって重要な微小管の重合・脱重合ダイナミクスの局所的な調節機構と して,我々は微小管上を運動するキネシンの結合による微小管の構造変化を発見した.この構造変化の実態と細胞極性の形成への寄与について議論する.
単一細胞解析の発展により組織中の細胞の多様性が明らかになり,エピゲノム解析の対象は多数細胞から少数細胞に移行してきている.最近の次世代シーケンサーを用いた少数細胞のエピゲノム解析技術の開発は,ChIP-seqに代わる新たなスタンダードになりつつある.
化学的に不安定で酸性やアルカリ性条件下で加水分解されやすいヒスチジンやアスパラギン酸のリン酸基を持つタンパク質を,中性でリン酸基を捕捉する機能性分子,Phos-tagを基盤とした技術を用いて解析する方法について紹介する.
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