環状ホスファチジン酸は,ヒトをはじめとしたさまざまな生物(動物では脳や血液など)に含まれ,多彩な機能を持つ生理活性脂質である.本稿では,環状ホスファチジン酸の機能に関する研究成果と今後の課題について紹介する.
「観るだけでわかるタンパク質間相互作用解析法(VIPアッセイ)」と改良型CRISPR-Cas9法を用いて明らかになった繊毛内タンパク質輸送(IFT)装置の構築様式と機能について紹介する.
高疎水性ドメインを持つ膜タンパク質は,水溶性の細胞質内で合成されながらも目的の疎水性膜へたどり着き挿入される.細胞はいかにしてこのリスクを伴う繁雑なステップを取り扱うのだろうか?
メチオニン分解酵素のX線結晶解析で得られた複数の中間体の立体構造をもとに,反応機構の解明を試みた.その結果,反応の重要な段階として,補酵素ピリドキサールリン酸と基質の複合体上で起こる水素原子の[1,5]-シグマトロピー転位を含むと推測した.
脂質は生体細胞膜を構成する分子であり,細胞増殖や細胞死などの細胞応答において重要な生物活性分子として機能することが知られている.本稿では,脂質を介したプログラム化細胞死ネクロプトーシスの制御についての最近の知見を紹介する.
cGAS-STING経路は,DNAウイルスに対する防御応答を担う自然免疫機構である.本稿では,当該経路の制御・意義を概説するとともに,筆者らが見いだしたゴルジ体に局在するRab2B-GARIL5複合体による当該経路の制御について紹介する.
肝臓は解毒や代謝を担う器官であり,さまざまなストレスにさらされる.異常肝細胞はがんなど疾患の原因になり,その排除は必須である.我々は,Hippo-YAPシグナル伝達経路が肝サイズの制御に加えて,傷害肝細胞排除の制御にも関与することを発見した.
慢性疼痛では,脊髄後角での可塑的変化である中枢性感作が生じている.その結果,体性感覚の伝達様式は変容し,感受性の増大により激しい疼痛を感じる.この病態に関わる分子探索を目的とした比較プロテオミクス解析から,新規の候補分子を同定した.
ストレス応答キナーゼASK1は,細胞が受けるストレスの種類・強度・持続時間等の違いによって,厳密な活性制御を受けることで,適切な細胞応答を誘導する.その厳密な活性制御に,多様な翻訳後修飾が重要な役割を担うことが明らかになってきた.
脳形成を支える神経幹細胞の多数化・高密度化は,それらが細胞周期依存的に行う核の反復運動が,大規模集団のレベルで最適化されてこそ可能である.最近,神経幹細胞をとりまく外部要因が,「生産物流」システムの効率・安全に力学的に貢献するとわかった.
制御性T細胞は自己免疫寛容の確立・維持に必須の役割を担っている.本稿では,ヒト自己免疫疾患IPEX症候群において同定されたFoxp3変異体の機能解析から明らかになった,制御性T細胞における転写因子BATFの重要な役割について解説する.
細胞膜の内・外層間でのリン脂質分子の輸送は,さまざまな細胞現象に関与する.本研究ではリン脂質ホスファチジルセリンの膜外層から内層への輸送(フリップ)が,機械受容イオンチャネルPIEZO1の活性化を介して筋管の形態を制御することを明らかにした.
外敵の襲撃を回避する逃避行動は生存に必須である.侵害覚(痛覚)ニューロンは危機察知の最前線にある.この一次感覚ニューロンが,中枢神経回路と協調しつつ,個体の逃避行動のパターンを選択する上で主導的な役割を果たしていることがわかってきた.
近年,クロマチン構造の細胞機能における重要性が明らかになり,新たな解析手法が報告されるとともに新たな知見が見いだされている.次世代シーケンサーを用いたクロマチン相互作用解析の最新の手法とその改良について概説する.
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