栄養や代謝は老化と密接に関わり, Hallmarks of Agingの一つとして位置づけられる.たとえばカロリー摂取を30~40%制限することは,寿命延長や老化関連疾患の予防に寄与することが哺乳類で示されている. その作用は単なるエネルギー産生低下によるものではなく,NAD代謝やAMPK,mTORなど多様な代謝センシング経路を介した分子機構に基づくことが近年明らかになりつつある.本企画では栄養代謝と老化制御の最新知見を紹介する.具体的には,加齢に伴い低下するNAD代謝と寿命制御,さらにNADHセンサーであるCtBP2を軸としたエネルギー代謝恒常性の維持機構について議論する.また,肥満病態の進展において脂肪組織血管新生が果たす役割や,代謝物がエピゲノム修飾を介して細胞老化を制御する機構を取り上げる.加えて,生活習慣病における脂肪酸の質の重要性,脂質による骨格筋再生・修復調節,免疫代謝の破綻と生活習慣病の関連について解説する.さらに,脂肪組織の代謝リモデリングが老化や寿命に与える影響,そして老化に伴う脂質代謝制御転写因子の機能変調について概観する.これらの知見は,老化機構の理解を深めるとともに,栄養介入や代謝制御を基盤とした新たな抗老化戦略の開発に資することが期待される.
抗老化の標的としてNAD代謝が注目を集めている.本稿では,近年明らかとなった生体内における新たなNAD代謝経路について概説し,NADレベルの減少がどのように老化を引き起こすのか,さらにはNAD 補充療法の抗老化への臨床応用について述べる.
転写共因子CtBP2はNAD(H),脂肪酸CoAによって活性調節される代謝産物センサーであり,標的も代謝関連遺伝子が多く代謝の中核因子であること,広範な病態に関連することが明らかになってきた.本稿では同分子を中心に代謝の新しい分子機序について概観する.
肥満に際し,脂肪組織は血管新生によりその体積を増大させる.本稿では,肥満に伴う脂肪組織血管新生の意義,肥満病態進展との関連について紹介し,血管新生進展機構における低酸素,血管新生因子のVEGF,ならびにPDGFの重要性を解説する.
老化細胞におけるエピゲノムと細胞内代謝の連関について,SASPやDNA損傷応答(DDR),ミトコンドリア機能障害など細胞老化表現型との関係性に着目して,最新知見を包括的にレビューする.
脂肪酸の質(飽和度や炭素鎖長などの構造的特性)は,生活習慣病の発症・進展に深く関与する.特に,脂肪酸の質を制御する酵素(Elovl6,SCD1,LPCAT3など)は脂質組成や細胞機能に影響を及ぼすことから,次世代の創薬標的として期待される.
骨格筋は再生能が高い臓器であり,常に軽度の傷害と再生を繰り返しながら恒常性を維持する.筋再生の過程においてはマクロファージが必須であり,多様な脂質がマクロファージの機能を制御し筋再生にも影響を与えることが明らかとなっている.
肥満や脂肪肝,慢性腎臓病等に代表される生活習慣病は,代謝疾患であると同時に慢性炎症性疾患の側面を有する.本稿では,実質細胞と免疫細胞の相互作用の場に焦点を当てて,生活習慣病の発症・進展における免疫代謝変容の実態について最近の知見を概説する.
長期の総摂取カロリーの制限(CR)は,加齢性疾患の発症を抑制し,平均および最大寿命を延伸する.本稿ではCRによる脂質合成・ミトコンドリアプロテオスタシスの維持を介した白色脂肪組織の代謝リモデリングの意義について考察する.
加齢に伴い脂質代謝およびその制御因子は大きく変動し,老化の進行や老化関連疾患の発症に関与する.本稿では脂質合成を制御する転写因子SREBP-1と脂質分解を制御する転写因子PPARαの加齢に伴う機能変調に焦点を当て,老化や老化関連疾患との関連を紹介する.
多細胞は,撹乱による揺らぎを解消して秩序を形成・維持する性質,「ロバストネス」を有する.しかし,多細胞のロバストネスの分子基盤はいまだに不明である.本稿では,我々が最近発見した,生理的細胞競合を介した多細胞ロバストネス機構を紹介する.
中心体分離は,染色体分配の要となる双極性紡錘体の形成を駆動する有糸分裂プロセスであり,その異常は染色体不安定性を介して発がんなどにつながる.本稿では,中心体分離の分子機構と制御原理を体系的に整理し,この生命現象への新たな理解を提示する.
酸素は生命維持に不可欠で,濃度低下は致命的となる.そのため,細胞には酸素変動を感知する分子機構が備わっている.従来知られるPHD-HIF 系に加え,我々は慢性低酸素に応答する新たな経路としてPNPO-PLP 制御系を発見したので紹介する.
生命現象に関与する量子トンネル効果と,その細胞レベルでの影響について,酵素反応とDNA修復を題材に概説する.
光合成生物の中性脂質代謝は,環境応答機構の解明やバイオ燃料生産研究において重要である.本稿では,最近,発見された新奇中性脂質であるアシルプラストキノールについて,発見の裏話を交えながら解説し,バイオ燃料生産の可能性について考察する.
生命必須元素セレンは,21番目のアミノ酸であるセレノシステインとして抗酸化酵素などの活性中心に取り込まれ機能を発揮する.本稿では,セレン代謝について概説した後,筆者らが同定した新たなセレン代謝制御因子PRDX6 について紹介したい.
細胞内の抗酸化酵素の一つであるペルオキシレドキシン6(PRDX6)が,酸化ストレス制御に必要な微量元素であるセレンの運搬タンパク質として働くことを明らかにした.また,PRDX6が,がんの増殖や脳内でのセレンの利用効率にも重要な役割を担うことを解明した.
抗体ベースのin situビオチン標識法を用いることで,遺伝子導入などの操作を行わずに,免疫染色法と同様の簡便操作によって,細胞内非膜オルガネラ構成因子の網羅的同定に成功した.
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