極小のシリンダー型構造体である中心小体は,1細胞周期に1度だけ1コピー複製される.この進化的に保存された中心小体構造は,どのような因子群の自己組織化により構築され,微小管形成中心としての能力を獲得するのか? その分子機構に関して議論したい.
アラビノガラクタン-プロテイン(AGP)は植物のプロテオグリカンで,主に細胞壁(細胞外マトリックス)に局在している.AGPは情報因子として注目されており,糖鎖特異的な分解酵素を適用した,糖鎖-機能相関性の解明が期待される.
近年,細胞の形態変化を伴う細胞運動等の機能において細胞膜の張力が重要な役割を果たしていることがわかってきた.本稿では,細胞運動における「膜張力センサータンパク質」による細胞膜の張力を介したアクチン重合の制御機構について最新の知見を紹介する.
高度に凝縮した染色体は,分裂しようとする細胞の象徴である.その現象こそ身近だが,DNA分子がどのような機序や規則で折りたたまれるのかはいまだ謎である.本稿では,コンデンシンの発見とその研究によってみえてきた,染色体構築のメカニズムを概観する.
コヒーシンは種々の染色体機能において重要な役割を担っており,特に転写制御と染色体高次構造を連動する可能性のある因子として注目されている.本稿では希少疾患研究により明らかにされつつある,コヒーシンによる転写制御機構について取り上げる.
がん抑制タンパク質p53はDNAの標的配列に結合し細胞のがん化を防ぐ.転写活性に関わるp53と標的DNAの結合は翻訳後修飾などにより調節される.単分子蛍光観測などの生物物理学的手法により明らかになった,標的DNAへのp53の結合やその制御の仕組みを解説する.
複数の分子や外的環境の組合わせが生命に与える影響を網羅的に計測することは重要だが,実験数の「組合わせ爆発」が常に壁となる.実験試料の「DNAバーコード化」と「DNAバーコードの連結化」によってこれを解決するさまざまな遺伝学的手法が登場しつつある.
記憶はどこに保存されているのか,神経科学者は数十年にもわたり膨大な実験を繰り返してきた.本稿では学習や記憶の基盤となる細胞レベルでのメカニズム(セル・アンサンブル)や,我々が提唱するシナプス・アンサンブルについて概説および考察する.
グラム陰性菌に存在する小分子RNA(sRNA)は,主に,RNAシャペロンであるHfq依存的に標的mRNAと塩基対を形成し,その発現を制御する.本稿では,Hfq結合性sRNAの性質,および生合成過程に焦点を当て,最近の報告を紹介する.
近年,NAD+代謝とサーチュインは,さまざまな老化関連疾患においてその関連性が報告されている.本稿では,幹細胞老化制御に焦点を当て,NAD+補充やサーチュイン活性化が幹細胞老化を防ぐ有効な手段になりうるかどうかについて最新の知見を概説する.
我々は機械的刺激(メカニカルストレス)と脳内のグリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイト(OL)との関係に着目した.OLにメカニカルストレスが負荷されると,YAP因子が活性化され,OLの形態と成熟過程が制御されることを明らかにした.
ポドプラニンは悪性胸膜中皮腫に高発現するⅠ型膜貫通型タンパク質である.このポドプラニンを標的としてADCC活性を誘導する抗ポドプラニン抗体NZ-1と,NZ-1をベースとした新規抗体医薬の抗腫瘍効果に関する基礎的検討について紹介する.
生体膜を構成するリン脂質は,グリセロール骨格のsn-1位に飽和脂肪酸,sn-2位に不飽和脂肪酸を持つものが多い.神経細胞では,この逆の脂肪酸配置を持つまれなリン脂質が膜ドメインを作り細胞膜における膜タンパク質の局在を調節することがわかった.
X線自由電子レーザーを多数のタンパク質微結晶に照射して構造解明する連続フェムト秒解析(SFX)の進歩が著しい.SFXによるタンパク質構造の決定法や常温かつ無損傷状態(ダメージフリー)での解析例について,最新の話題と技術的ノウハウを紹介する.
細胞内は,タンパク質や核酸で埋めつくされており,これが酵素活性などタンパク質機能に影響を与える.我々は,この細胞内の分子混雑状態を評価するために,分子混雑具合によって蛍光波長が変化する蛍光タンパク質プローブGimRETを開発した.
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