ミエリンは中枢および末梢神経系の神経軸索を囲む構造体で,神経の機能発現に重要な役割を持つ.本稿においては,ミエリン発生の新規制御分子「サイトヘジン」の役割について,遺伝子改変マウスを用いた研究を中心に,国内外の研究と比較しながら紹介する.
タンパク質切断酵素カルパインは幅広い病態に関与しほぼすべてでその阻害が症状を緩和する.マラリアやカルパイン遺伝子変異疾患ですらカルパイン阻害剤が効く.ではカルパインは不要か? もちろん反語である.カルパイン阻害治療の現状,問題点と今後を概説する.
細胞間の競合と協調は,多細胞生命システムの構築と維持に必須のファクターである.ショウジョウバエ遺伝学を用いた最近の研究により,細胞間の競合・協調機構の理解が大きく進展し,そのがん制御における重要性がみえ始めてきた.
DNAに結合して転写制御を担う核内受容体に,プラスチック原料であるビスフェノール類が結合することを見いだした.この結合体の結晶構造や,ハロゲン原子を含有する新世代ビスフェノールがエストロゲン受容体に対して示すユニークな活性などを概説する.
タンパク質の膜挿入反応を触媒したり,タンパク質膜透過チャネルSecYEGを活性化したりする多機能性糖脂質MPIaseが同定された.「糖脂質酵素」とも考えられるMPIaseの構造と機能について紹介する.
ヌクレオポリンNup358/RanBP2は有糸分裂期で染色体分離を制御する.本稿では,Nup358/RanBP2発現亢進と大腸がんの有糸分裂期での細胞死回避機構の関係,さらにはこの機構を標的とした大腸がん治療の応用について紹介する.
多様なNudix hydrolaseファミリーの機能解析を通して,最近新たに植物の本酵素サブファミリーによるGDP-D-マンノースおよびNADHの代謝制御がそれぞれアンモニア応答および環境ストレス応答に関わることが明らかになった.
がん化のごく初期の過程であるテロメアクライシス期における細胞死は,腫瘍抑制的な働きを持つ.本稿では染色体末端テロメアの状態によって制御される,テロメアクライシス期の細胞死経路について概説する.
糖鎖は再生医療に用いる細胞の品質管理のみならず,幹細胞機能において重要な機能を担う.ここでは,幹細胞に発現する糖鎖の構造,機能と,再生医療への応用について筆者らの研究成果を中心にご紹介する.
近年,成体におけるニューロン新生は脳機能に非常に重要であることが示されてきた.本稿では,成体神経幹細胞の未分化性維持機構とその発生起源について,最近の著者らの研究内容を中心に概説する.
高血圧はアルツハイマー病発症との関連が深い.アンギオテンシン受容体ブロッカーの投与が認知障害の発症を抑制することが報告されている.本稿では,アミロイドβタンパク質(Aβ)の産生および蓄積におけるアンギオテンシン受容体の関与について考察した.
本稿では,薬剤投与によって誘導的かつ,肝特異的Nrf1欠失マウスにおける代謝解析からNrf1が直接制御する標的遺伝子を見いだすとともに,新たに創出したNrf1 活性調節剤のスクリーニングについて概説する.
細胞膜脂質の組成変化が膜受容体活性に影響することは既知であるが,その機序に明確な答えはない.本稿では生化学的検討のみではみえてこなかった糖脂質とタンパク質の静電的相互作用を計測するために,顕微鏡による分子動態解析法に至った経緯を概説する.
脂質は皮膚のホメオスタシスを考える上で非常に重要な生体成分である.本稿では皮膚の恒常性や疾患を制御する新しい脂質メディエーターの発見を中心に最新の研究成果を交えて概説したい.
代表的な分子シャペロンであるシャペロニンのフォールディング援助機構については長い間論争が続いている.我々が最近提唱したモデルはさまざまな研究結果を矛盾なく解釈することが可能であり,最近の研究結果と照らし合わせて解説する.
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