どのような研究でも発表に至るまでには(あるいは発表してからも)さまざまな困難があるものだ.本稿では食欲を刺激するホルモンのグレリンについて,筆者らの発見に至る過程,発見後のグレリン研究の進展について,個人的な体験を中心に解説していきたい.
真核生物の細胞内において,異なる配送先に誤って局在したタンパク質は,速やかに分解されると考えられてきた.近年,細胞には誤配送タンパク質の配送をやり直す仕組み,局在化の校正機構が存在することが明らかになってきた.
近年,タンパク質のリン酸化が,液‒液相分離を制御する事例が数多く報告されている.天然変性領域に生じるリン酸化はいかにして相分離を制御するか.従来の「立体構造特異的」効果とは異なる「電荷ブロック」型制御の仕組みを解説する.
シナプス接着因子Neurexin‒Neuroliginは,シナプスの形成および成熟に寄与しており,ヒト遺伝子解析や動物モデルを使った解析から,これらと自閉症との関連が指摘されている.本稿では筆者および知人らが行った研究を中心に紹介する.
がん細胞と間質細胞との細胞間接触によりがん細胞で発現が増加するストマチン(Stomatin)は,Aktリン酸化酵素PDPK1を標的としてAktシグナルを阻害することで,がん細胞への細胞増殖能抑制およびアポトーシス誘導を介して抗腫瘍作用を発揮する.
細胞外小胞の一種であるエクソソームは,さまざまな生理現象や疾患に関与することが知られている.本稿では,細胞内で形成されたエクソソームを選択的に細胞膜方面へ輸送する分子基盤について,最近の我々の報告を中心に紹介したい.
生化学的な着想から,酵素を用いたチロシン残基特異的修飾法を開発した.本修飾法ではタンパク質表面に露出したチロシン残基が選択的に修飾される.抗体の部位選択的修飾と機能化,蛍光免疫センター分子の作製法に本手法を応用した.
AKTシグナルは細胞の増殖,生存,成長,代謝を促進する重要なシグナル経路である.本稿では,AKTが代謝リモデリングを通してエピジェネティック制御に関与し,細胞初期化を促進する機構について概説する.
脂質は細胞を構成する主要な生体分子であり,細胞機能維持において多様な役割を担っている.本稿では,脂質関連研究の中でも脂肪酸代謝機構について概説し,分子プローブを用いたイメージング解析技術を紹介する.
NTCPは肝細胞において胆汁酸のトランスポーターとして働く.一方で,B型肝炎ウイルスの受容体としても働く.NTCPの立体構造からB型肝炎ウイルスの侵入機構の一端が明らかになった.
哺乳類の限られた脳領域に存在する成体神経幹細胞は,生涯を通じて神経新生を介し脳可塑性に貢献すると考えられているが,その維持機構においては不明な点が多い.成体神経幹細胞の維持メカニズムとして新たに見いだした,核内構造タンパク質の役割を紹介する.
我々は正常リンパ節および悪性リンパ腫のリンパ節病変の非血液細胞の一細胞解析により,血管・リンパ管・間質細胞に大別されること,それぞれは10種類,8種類,12種類,合計30種類のサブタイプに分類されることを同定し,アトラスを作製した.
筆者は,がんに起因する宿主の病態生理のメカニズムを調べている.最近,宿主のニコチンアミドメチル基転移酵素が,がん個体の肝臓で観察される代謝異常を媒介することを見いだした.本稿では,当該研究を,共同研究の経緯などを交えながら概説する.
病原体の感染に対する宿主因子の研究より,非受容体型チロシンキナーゼAblがC型肝炎ウイルスの生活環における粒子形成過程に関与することや,Abl結合タンパク質3BP2が真菌に対するC型レクチン受容体のシグナル経路に必要であることが解明された.
ヒトに胃がんを発症させるピロリ菌は,胃内でゲノム変異を蓄積して,病原因子発現調節因子であるsmallRNAHPnc4160の発現量を変化させる.本稿では,ピロリ菌がゲノム変異を獲得して,持続感染を成立させるメカニズムを紹介する.
発光生物による酵素反応(ルシフェリン‒ルシフェラーゼ反応)は,ATP濃度測定をはじめとしたさまざまなアッセイに利用されている.本稿では,二分割したルシフェラーゼによるスプリットルシフェラーゼ再構成法について,その発光センサーへの応用例を概説する.
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