神経シナプス後部のPSDと呼ばれる特殊な膜領域には,シナプス伝達に必須のパルミトイル化タンパク質が高度に濃縮されている.本稿では,パルミトイル化修飾酵素を軸とした神経機能研究,および新たに同定された脱パルミトイル化酵素について紹介する.
糖鎖の発現・機能・疾患との関わりについて,糖転移酵素を中心とした研究内容について紹介する.また糖アナログを用いた最近のケミカルバイオロジーのアプローチについても紹介したい.
翻訳の途上で自身の翻訳伸長を一時停止(アレスト)させ,その状態で細胞機能を調節するアレストペプチドが近年脚光を浴びている.本稿ではさまざまなアレストペプチドについて紹介するとともに,その研究がもたらした生物学上の新たな概念やインパクトについて論ずる.
ヒトにおける一次繊毛の異常は繊毛性疾患を引き起こすが,多くのがん細胞においても一次繊毛が消失していることが知られている.本稿では,一次繊毛とがんの関係,および筆者らが最近明らかにした膵管がん細胞における一次繊毛消失機構について紹介する.
スフィンゴミエリン(SM)は生体膜を構成するスフィンゴ脂質の一つであり,その合成はゴルジ体におけるSM合成酵素(SMS)が担っている.本稿ではウイルス感染に関わる生活環における,SMSによるSM生合成の関与と役割について概説する.
セラミダーゼはセラミドを脂肪酸とスフィンゴシンに加水分解する酵素である.本稿では,緑膿菌が分泌する中性セラミダーゼが宿主由来のスフィンゴシンにより発現誘導されるメカニズムとその生理的な意義について紹介する.
分子生物学的手法の進歩や新しい知見の発見により,これまで多くの謎に包まれていた造血幹細胞の維持機構やニッチ細胞についての解明が進んでいる.本稿では著者らの研究結果を中心に紹介するとともに,これまで報告された興味深い知見を概説する.
ヒト多能性幹細胞技術の確立は個体発生等を扱う基礎研究から再生医療等の応用まで幅広い分野に影響を与えている.本稿では多能性幹細胞を維持培養する環境の重要性を,特にNaive型とPrimed型多能性という概念に焦点を当て,議論する.
インターフェロンシステムは感染防御の主体をなすものである.我々は,インターフェロンによって発現が誘導され,デングウイルスに対して抑制活性を持つ細胞性因子RyDEN/C19orf66を新規に同定した.本稿ではRyDENのユニークな分子機能について概説する.
糖鎖は内部運動の自由度が非常に高く、溶液中では一定の3次元構造をとっていない.本稿ではこうした糖鎖を対象としたNMR分光法と計算科学を組み合わせた動的構造解析手法を紹介するとともに,糖鎖とレクチンとの相互作用の仕組みに関して考察する.
細菌べん毛特異的輸送シャペロンであるFlgNは,細胞質内でべん毛構成タンパク質であるFlgKとFlgLに特異的に結合し,それらのタンパク質輸送を促進する.本稿では,FlgNの構造と機能について解説する.
赤血球分化に重要な転写因子GATA1は複数のDNA結合ドメインを有する.本稿ではアミノ末端側亜鉛フィンガーにより調節される,シス配列パターン特異的なGATA1の結合様式修飾と,その生理的役割について概説する.
翻訳開始因子eIF4Aは多様な分子種によって精密に制御されている.本稿ではeIF4Aを介した翻訳阻害を概観しつつ,我々が近年研究しているeIF4A阻害剤RocAのユニークな分子メカニズムの詳細について解説する.
がん浸潤は2種に大別される.一つは原発巣から転移して体内で分散する播種型,一つは転移せずに局所で増殖する圧排性増殖型である.これら浸潤モード(型)の決定や形成にとって,がん周辺の間質細胞は重要な役割を担っていた.
高内皮細静脈内腔に発現する硫酸化糖鎖はリンパ球ホーミングを制御する重要な接着分子として機能している.本稿では,新規に樹立したモノクローナル抗体を用いて明らかにしたリンパ球ホーミングにおける硫酸化糖鎖の機能について紹介する.
我々はマイクロデバイスを用い,平面リン脂質非対称膜にジェット水流を印加することにより,リン脂質組成非対称膜リポソームを作製する方法を発見した.このリン脂質組成非対称膜を用いて,ペプチドや膜タンパク質と膜との相互作用観察を行った.
Th17細胞は腸管に常在し腸の恒常性の維持に重要であるが,一部のTh17細胞は病原性が高く自己免疫疾患の原因となる.本稿では,Th17細胞の病原性の誘導において転写因子JunBが果たす重要な役割について解説する.
分岐鎖アミノ酸(BCAA)は哺乳類の必須アミノ酸であり,その分解制御の異常はさまざまな疾病に関与する.本稿では,ヒトの疾患およびノックアウトマウスの研究から得られた結果をもとにBCAA分解制御機構の重要性について紹介する.
ヘモシアニンは軟体動物や節足動物の青い血の成分であり,超巨大細胞外酸素運搬タンパク質会合体である.軟体動物ヘモシアニンとしては初のX線結晶構造解析に取り組み,3.8 MDaのスルメイカ由来ヘモシアニン会合体構造を3.0 Åの分解能で決定することに成功した.
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