Protrudin(プロトルーディン)は神経細胞に豊富で,小胞体とエンドソームを繋留 し,その膜接触部位でPDZD8やVAP やRab7と複合体を形成している.そして脂質 輸送を介してエンドソーム輸送や成熟に働き,神経恒常性維持に寄与している.
RIPキナーゼの中でもRIPK1とRIPK3は特に細胞死(アポトーシス,ネクロプトー シス)と炎症の制御において中心的な役割を果たしている.本稿では我々の最新の 知見を交えて,RIPK1,RIPK3が持つ多彩な機能について概説したい
オートファジー類似のタンパク質分解機構として,ゴルジ体膜を起源とする GOMEDを発見した.GOMED実行には,Ulk1,Wipi3,Rab9などが必要であり,イ ンスリン分泌制御や神経細胞の維持,赤血球分化などに関わっている.
小胞体でのタンパク質品質管理機構は,N型糖鎖依存性によって構造形成経路およ び分解経路が大別され,その基本的な分子メカニズムは酵母から高等動物まで保存 されている.本稿では,主に高等動物の機構に焦点を当て,最新の知見を交えて紹 介する.
一次繊毛は細胞表面に形成される突起状の構造であり,外界のシグナルを受け取る 役割を担う.本稿では,筆者らが見いだしたいくつかの翻訳後修飾酵素に着目し, 繊毛におけるタンパク質輸送の制御機構やその生理学的役割,疾患との関連につい て概説する.
腸管上皮組織の恒常性は,粘膜陰窩に局在する希少な腸管上皮幹細胞によって担わ れている.本稿では,生理的あるいは上皮損傷時において,腸管上皮幹細胞の機能 や性質が維持されるメカニズムを独自の研究成果を含め紹介する.
本来の目的地とは異なる場所に配送されたタンパク質は,速やかに分解されると考 えられてきたが,細胞にはタンパク質の配送をやり直す校正の仕組みがあることが わかってきた.Msp1によるタンパク質の配送校正機構について概説する.
神経細胞の軸索の根元は軸索起始部と呼ばれる特殊化された区画であり,活動電位 発生と神経極性維持という主に二つの機能を担う.本稿では,軸索起始部に特有な 細胞骨格構造について概説し,その制御メカニズムと制御破綻について解説する.
チロシナーゼはメラニン合成の鍵酵素であり生体防御に関与するため,その反応機 構に関する研究が繰り広げられてきた.本稿では,銅中心が基質の結合に伴って大 きく変動し,結合した活性酸素種を反応効率の高い位置へと再配置するという新規 な反応機構について紹介する.
2001年に高速AFMが登場して以来20年あまりが経過した.この間,高速AFMは急 速に進展しながら世界に拡がり,タンパク質動態観察の多くの応用研究が報告され るようになった.タンパク質計測の最新の応用研究と最近の力学計測への展開を紹 介する.
HNK-1糖鎖は神経系特異的に発現し,脳高次機能を調節する.HNK-1は特定の分 子に発現し,かつその糖鎖構造も多彩である.本稿では近年明らかとなったHNK-1 キャリア分子とその糖鎖構造について,各機能を踏まえて脳発達時期ごとに概説す る.
プロテアソームによって効率よく分解される基質は,ユビキチン化を受けるのみな らず,分解開始領域となるinitiation regionを内在的に有している.筆者らはHPV E7 によるRbタンパク質の分解機構において,Rbが露出するinitiation regionの質によっ てその安定性を変化させることを発見した.
筆者らは生化学的解析,および,クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析を用いる ことによって,ウイルスに対する自然免疫応答において重要なRNAヘリカーゼと TRIM E3ユビキチンリガーゼ間の相互作用において,進化的に保存された二つの ルールを見いだした.
加齢造血幹細胞を若いマウスの骨髄ニッチに移しても機能的な若返りは得られない. この際,加齢造血幹細胞のトランスクリプトームは大幅に若返りするものの,DNA メチル化は加齢型が持続し,エピゲノムの加齢変化が強力に幹細胞機能を制御する ことが示唆される.
細胞老化は個体老化を引き起こす要因の一つであり,その理解なしに個体老化を語 ることはできない.これまでの生体内の細胞老化の解析に用いられてきたマウスモ デルを紹介するとともに,1細胞解析技術を用いた最近の知見や老化研究への今後 の展望を概説する.
リボスイッチは遺伝子の発現調節をつかさどる細菌に特有の非コードRNAである. PreQ1リボスイッチと結合する合成化合物を同定し,両者の相互作用と当該化合物 によるリボスイッチ下流遺伝子の転写終結効果を検討した.本稿ではその結果と新 たな抗生物質開発の可能性を解説する.
マクロファージにおいて肺炎球菌はLC3-associated phagocytosis(LAP)を誘導し分 解される.肺炎球菌によるLAPの誘導能すなわち同菌分解能は老化とともに減弱 し,高レベルの炎症性サイトカインの発現が誘導される.
ネイティブアガロース電気泳動はタンパク質の構造変化や凝集の新しい検出方法で ある.本稿ではその方法,タンパク質の変性凝集,抗体の精製,BSAの限定還元, 酵素のゲル中活性染色,銀染色の方法などについて解説する.
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