エンドセリンとその受容体ETA・ETBは,Gタンパク質を通じて体の恒常性を調節する.本稿は,これまでの構造研究で明らかになった,エンドセリン結合時の受容体の構造変化や,Gタンパク質の活性化機構,臨床で使われている拮抗薬の結合様式について解説する.
ERK経路は増殖,分化,免疫応答などの生命現象をつかさどる情報伝達システムであり,その破綻はがん,感染症,発生異常などの原因となる.本稿ではERK経路の制御機構と生理機能,およびその破綻がもたらす疾患に関する最新の知見を概説する
近年,軸索輸送の分子モーターKIF1Aの遺伝的変異が神経疾患の原因となることが明らかになった.我々は線虫遺伝学と生化学によってKIF1Aの疾患変異を解析し,シナプスの材料となる軸索輸送の亢進や減少がこの疾患の背景にあることを示した.
授乳は哺乳動物の存続に必須の機能であるが,授乳を可能とする母体の脳の仕組みはよくわかっていない.今回我々は,遺伝学的ツールの発達したマウスを用いて,授乳に必須の神経ホルモンであるオキシトシンの分泌動態をリアルタイムに可視化する系を構築した.
筆者らは概日時計タンパク質であるCRY1とCRY2を標的とする世界初の化合物を見いだしてきた.これらのユニークな化合物について,CRYアイソフォーム選択性を生み出す分子機構,ならびに概日時計関連疾患への応用の可能性に関する最新の知見を紹介する.
老化に伴ってどのような機構でオートファジーが低下するのかは不明である.筆者らが同定したオートファジー抑制因子Rubiconの増加が個体老化の一因である可能性が示唆されており,本稿では個体老化の誘因となる細胞老化の制御機構について,Rubiconを交えて概説する.
アストロサイトは,脳や網膜など神経組織に存在する非神経細胞の一つであり,緑内障患者の網膜や視神経乳頭部で病的な変化を示すことが知られている.本稿では,アストロサイトの機能異常が正常眼圧緑内障患者様の症状を惹起するメカニズムについて紹介する.
結核菌は細胞壁に特有の脂質を発現し,強い免疫賦活活性を有するものや,逆に免 疫系を制御して病原因子として働くものが知られる.本稿では,これら脂質の宿主受容体による認識とそれを介した自然免疫活性化の制御機構について解説する.
体内時計ニューロン内では時計遺伝子転写やCa2+/H+濃度が約24時間周期で振動している.本稿ではラットやショウジョウバエを用いて,ミトコンドリア陽イオン輸送体LETM1が,この根源的な振動の発生に関与することを明らかにしたので報告する.
新たに発見されたビタミンKのフェロトーシス細胞死抑制作用と,これまで正体が不明であったワルファリン非依存性のビタミンK還元酵素の同定について概説する.コエンザイムQ10還元酵素として知られていたFSP1がビタミンK還元酵素でもあったのである.
生物のゲノムにはさまざまな機能を持ったシステムがコードされており,生命科学を中心とした分野での基盤技術に利用されることがある.本稿では,近年注目されているCRISPR-CasシステムならびにOMEGAシステムについて,その分子基盤を解説する.
RNA修飾は高次生命を調節する重要な分子機構として近年研究が盛んになっている.RNA修飾は代謝・分解を受けた後に「修飾ヌクレオシド」として豊富に生体内に存在しており,中には免疫応答を活性化するなど生理活性機能を持つ場合がある.
III-E型CRISPR-Casシステムに関与するCas7-11‒Csx29複合体はRNA依存性ヌクレアーゼ-プロテアーゼとして機能する.本稿では,Cas7-11‒Csx29複合体の機能,構造,応用に関して紹介する.
抗原提示細胞に発現するC型レクチン受容体は,外来微生物の捕捉や抗原提示に関与し,抗原分子やアジュバント分子を選択的に輸送するための魅力的な標的である.本稿では,糖鎖を利用したC型レクチン受容体選択的な輸送戦略について概説する.
ミトコンドリアの独自のゲノム(mtDNA)は,細長いミトコンドリアに沿って活発に移動しているが,そのメカニズムはほとんどわかっていなかった.本稿では,我々が見いだしたmtDNAのダイナミックな制御機構と,この動的変化がもたらす意義を紹介する.
幹細胞の未分化性維持や自己複製能などには栄養因子が深く関与している.本稿では,アミノ酸であるメチオニンと微量元素である亜鉛が,その相互作用を通じてヒト多能性幹細胞の未分化性維持機構にどのように貢献するかについて解説する.
細胞増殖過程において分裂期細胞核の細胞内配置はゲノム安定性を保証するためにきわめて重要である.しかし,その分子制御機構については不明な点が多い.そこで,分裂酵母において最近明らかになった新たな分裂期細胞核の配置制御について解説する.
リゾホスファチジン酸(LPA)は,LPA受容体1/5を介してその下流のジアシルグリセロール‒新型プロテインキナーゼC経路とRho-ROCK経路を活性化し,ネクチン‒アファディン複合体と相補的に機能して密着帯(TJ)と接着帯(AJ)からなる頂端結合複合体(AJC)の形成を促進する.
心臓が左にあるといった左右非対称性はどのように決定されるのか,ノード繊毛が関与することが知られていた一方,その機構は論争が続いていた.本稿では先進的光学顕微鏡から明らかとなったノード不動繊毛が左右対称性を破る生物物理的メカニズムを解説する.
CaMKホスファターゼ(CaMKP)は,CaMKIIを脱リン酸化する酵素として同定・精製されたPPMホスファターゼである.本稿では,CaMKPの生理機能とその阻害剤研究について概説し,創薬標的としてのCaMKP研究の展望を議論する.
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