MCM2-7複合体はDNA複製にヘリカーゼとして機能する.はじめてMCM遺伝子が同定されてから約30年を経た在,その研究の歴史を振り返るとともに,最近の進 展について解説する.
神経シナプスの形成や機能には,多様な接着分子群が重要な役割を担っている.本稿では,シナプス接着分子の立体構造から明らかになってきた機能メカニズムの詳細について概説する.
嚢胞性線維症はCFTRのミスフォールディングが原因で起こる.異常CFTRは小胞体および形質膜タンパク質品質管理機構により分解され,生理機能が失われる.本稿では,CFTRタンパク質品質管理機構と近年上市されたCFTR分子標的薬について紹介する.
発達過程において神経細胞は,樹状突起を適切な軸索に向けて選択的に展開することで,高次機能を担う成熟した神経回路を作り上げる.本稿では,マウス体性感覚野in vivoイメージングを中心に,神経活動依存的な樹状突起精緻化に関する最近の研究動向を概説する.
近年,哺乳類大脳皮質を構成する神経細胞サブタイプの起源と進化に関する研究報告が相次いでいる.本稿ではこうした研究の国際動向を概略し,発生拘束や細胞型の相同性という観点からこの問題の論点を明らかにする.
X線自由電子レーザーを用いた高速分子動画法の膜タンパク質動的構造解析への応用をバクテリオロドプシンを例に紹介する.
がん細胞と間質細胞との接触によりがん細胞で発現が増加する細胞表面分子epithelial membrane protein 1(EMP1)は,その細胞内領域でCopine-IIIと結合し,Rac1を活性化,がん細胞の運動能を亢進させ,がんの浸潤・転移を促進する.
経細胞の間で形成される大脳神経回路の発達,編成,機能を解明することは,脳高次機能を理解する上で重要な課題である.本稿では,抑制性介在神経細胞と興奮性投射神経細胞の間に作られる局所神経回路を解析するための遺伝学的手法を紹介する.
分泌リソソームは,骨吸収や感染細胞の除去など多くの生理機能に不可欠である.酸性化を担うプロトンポンプである液胞型ATPase(V-ATPase)が,分泌リソソームを形質膜へ向かって輸送するメカニズムの一端を明らかにしたので紹介する.
腸管には数兆を超える細菌が共生しており,これら腸内細菌由来の代謝産物が腸管免疫細胞および上皮細胞に作用することで,腸管恒常性が維持されている.本稿では筆者らが同定した腸内細菌由来代謝産物を中心にこれらの腸管恒常性維持機構について概説したい.
オートファジーは加齢に伴いその活性が低下することが多くの動物で知られていたが,そのメカニズムはよくわかっていなかった.最近我々はオートファジーの負の制御因子であるRubiconの増加がこのオートファジー低下と老化の要因であることを突き止めた.
Dystrophic endballは損傷軸索遠位端に誘導される異常構造で,中枢神経軸索の再生を困難にしている責任構造とされてきたがその形成機構は不明だった.本稿では筆者らが最近明らかにした硫酸化糖鎖による本構造の形成機構について概説する.
社会性行動に重要な愛情ホルモン・オキシトシンの脳内移行および中枢神経での作用発揮には,血液脳関門に発現するパターン認識受容体RAGEが必要であることがわかった.本知見は,親子の絆や“愛情”行動の分子機序の理解につながり,さらに研究を進めている.
BAG6を中核としたプレエンプティブ品質管理機構は,疎水性領域を露出した不良膜タンパク質をユビキチン依存的分解系に導いている.本稿では,この新しい品質管理系が低分子量Gタンパク質のヌクレオチド依存的分解にも関与する新知見について,併せて議論する.
リガンド結合や増殖因子には依存せず,細胞分裂期において受容体型チロシンキナーゼEphA2のSer897 がCDK1の下流でリン酸化する.リン酸化されたEphA2-pSer897 は,細胞膜の剛性維持を介して細胞分裂進行に関与する.
近年,生物における相分離が大きな注目を集めている.筆者らは,核内輸送受容体であるインポーチンβファミリーが,多様な相互作用によりRNA顆粒の形成にあずかるタンパク質の相分離を抑制する因子として働くことを見いだした.
動物進化において糖鎖構造の違いが果たした役割に迫るべく,主要シアル酸分子種の一つであるN-グリコリルノイラミン酸の,①すべての動物の脳で発現していない,②ヒトでは全身で発現していない,という二つの特徴に着目し,モデル動物を作製して検証した.
ヒスタミンはさまざまな炎症病態形成に関わる.本稿では,炎症時にヒスタミン産生を担う細胞に関しての最新の知見と,我々が作製したヒスタミン産生細胞モニターマウスを用いて見いだした,敗血症時に肺内ヒスタミン産生を担う好中球に関して紹介する.
植物・菌類型の長鎖塩基は哺乳類型とは異なる生理活性を示す.創薬や新規機能性分子の創製に向けた植物・菌類型の長鎖塩基の効率的な獲得を目指し,マイクロ波加熱と酵素法による長鎖塩基の調製と樹脂固定型グルタルアルデヒドによる精製法の確立を行った.
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