細胞膜を透過性にして細胞質交換を可能にした「セミインタクト細胞リシール技術」の歴史やその問題点にふれながら、本技術を細胞の画像解析技術と最適に組み合わせることで広がる新しい細胞設計・編集技術について紹介する。
CNNMファミリーは進化的に高度に保存されたMg2+トランスポーターであり,細胞内や個体レベルでのMg2+恒常性維持に機能している.その遺伝子変異や機能制御異常が,がんなどのヒト疾患の発症や悪性化に密接に関わることが明らかになってきた.
細胞内Ca2+シグナル伝達におけるリン酸化カスケード反応の調節酵素として見いだされたCaMKKはAMPKの活性化キナーゼとして代謝調節にまで深く関わっている。本稿ではCaMKKの活性制御の分子機構から酵素阻害薬による情報伝達解析まで概説する。
ゲノム研究の発展により、自閉症における数多くのゲノム変異が発見されてきた。しかし、それは多様性に富むものであり、非常に複雑な分子ネットワークが絡み合う。本稿では自閉症のゲノム変異からみえてきた分子メカニズムを追う。
膜テザリングとは、SNARE依存性膜融合の前段階で、細胞内膜交通の場所特異性を担保する最も重要な素過程である。本稿では、再構成実験系により近年発見された、ヒトRabファミリーGTPaseが駆動する膜テザリング反応について紹介する。
グライコプロテオミクスはバイオマーカー開発において有効なアプローチである。中でもレクチンマイクロアレイによる比較糖鎖プロファイリング法は、疾患糖鎖マーカー開発を強力に推進する。本稿ではさまざまな検体を対象としたプロファイリング例を紹介する。
生体膜リン脂質のホスファチジルセリン(PS)はほとんどが細胞膜の内葉に存在する.この非対称性はPSを外葉から内葉へフリップするフリッパーゼによって制御される.本稿では,初めて明らかになった細胞膜PS-フリッパーゼの調節メカニズムについて紹介する.
トランスグルタミナーゼは異種または同種のタンパク質を接着(架橋)させて機能変換を生じさせる酵素で、生物界に広く存在する。筆者らは、モデル生物として注目されてきたメダカでの本酵素の生化学的解析と変異体の作製を完了したのでこれを総括する。
キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞は強力な新しいがん免疫療法である。がん特異的 抗体の抗原認識部位とCD28などの共刺激分子およびCD3ζとの融合体であるCARを 発現するT細胞は、がん特異的抗原を認識して活性化し、がん細胞を傷害する。
傷ついた脳の神経回路は、わずかではあるが自然に修復する。神経回路の修復のメカニズム研究は、脳の内部の細胞や分子の働きを解明するものが中心であるが、我々は脳の外部環境が脳の神経回路の修復を制御することを見いだした。
近年、腫瘍微小環境の一つである酸性環境が、遺伝子発現やがん代謝の変動を介して悪性化に寄与することが明らかとなりつつある。本稿では、酸性環境に起因するがん悪性化のメカニズムの一端としてSREBP2を介したコレステロール酢酸代謝制御を中心に紹介する。
長年植え継がれてきた日本酒酵母の染色体数は不安定である。この現象を利用して有用な形質を持った日本酒酵母の育種に成功した。遺伝子組換え技術を使わずに異数染色体に着目して遺伝子を高発現させることのできる新たな育種技術として普及が期待される。
アミノ酸の合成経路が存在しない生物種では,その遊離アミノ酸は相当するアミノアシルtRNAから生産される.また,そのアミノアシルtRNAも間接経路によって合成される.本稿では間接経路におけるCys-tRNACysの合成複合体の分子機構を紹介する.
O-グルコースとO-フコース糖鎖は、Notch1の正常な細胞表面における発現を相加的に制御する。POGLUT1とPOFUT1は、EGFリピートのフォールディングと安定性制御のための新たな小胞体における品質管理機構に関与していると考えられる。
microRNAクラスターは生物種を超えて保存されていることが多く、機能的重要性が予想される。慢性に経過し治療抵抗性の神経障害性疼痛において、microRNAクラスターが神経興奮性制御に重要な役割を担っていることを明らかにしたので紹介する。
生殖細胞系列は複雑な分化過程を経て、次世代をつくる卵子や精子となる。これらの分化過程を体外培養系で再現できれば、分化機構の解明に大きく貢献する。本稿ではマウスの生殖細胞系列を体外培養系で再現する試みを紹介する。
立体構造解析や免疫用抗原作製にあたり、哺乳類由来膜タンパク質の高品質試料調製は依然困難な状況である。本稿では、この課題を克服するための大腸菌無細胞タンパク質合成技術に基づいた新しい膜タンパク質調製手法を紹介する。
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