生化学 SEIKAGAKU
Journal of Japanese Biochemical Society

Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society

アトモスフィアAtmosphere

リン脂質メディエーターの世界に魅せられて

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910141
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総説Reviews

細胞競合と補償的細胞成長による組織恒常性維持Tissue homeostasis through cell competition and compensatory cell growth

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910147

細胞競合という現象において,異常とみなされた細胞は組織から排除されるが,同時に異常細胞の周辺に存在する細胞は,その状況に応じて補償的に増殖や肥大成長することにより排除された異常細胞を補う.これによって細胞競合は組織恒常性の維持に貢献している.

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Shootin1による細胞–基質間の力の発生を介した神経細胞の細胞移動,極性形成,軸索ガイダンスおよびアクチン波Shootin1-Mediated Force Generation for Neuronal Migration, Polarity Formation, Axon Guidance and Actin Wave

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910159

Shootin1はクラッチ分子として重合・脱重合を繰り返すアクチン線維と細胞接着分子を連結することで細胞と細胞外基質の間に牽引力を生み出す.さらに,この力の発生はシグナル伝達によって調節を受ける.本稿では,最近のShootin1の解析を通じて明らかとなりつつある神経細胞の極性形成,軸索ガイダンス,細胞移動そして新たな細胞内分子輸送機構アクチン波の分子メカニクスを解説する.

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胃プロトンポンプの結晶構造によって明らかになった胃酸分泌の分子機構Molecular mechanism for the gastric acid secretion revealed by crystal structures of the gastric proton pump

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910169

食物消化時の胃はpH 1という強酸性状態になる.胃酸分泌を担う胃プロトンポンプの結晶構造から,このイオンポンプが強酸性環境を作り出す分子メカニズムの一端が明らかになってきた.

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生後脳におけるニューロン移動の調節機構Mechanisms for neuronal migration in the postnatal brain

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910178

近年の研究で,生後の脳にも神経幹細胞が存在し,新しいニューロンが産生されることが明らかになった.本稿では,この新生ニューロンが脳内の目的地へ向かって長距離を移動し,脳の可塑性や傷害後の再生に関与するメカニズムや意義について概説する.

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カルシウム依存的相互作用因子から探るpenta-EF-handファミリーの機能Exploring functions of the penta-EF-hand family by searching for calcium-dependent interacting factors

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910191

典型的カルパイン分子中に見いだされたpenta-EF-hand(PEF)ドメインを持つALG-2は,ESCRTシステムや小胞体-ゴルジ体間小胞輸送調節に働いている.相互作用因子認識機構と機能について他の関連タンパク質と併せて紹介する.

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NaVチャネル全史―細菌からヒトまで―A brief history of the NaV channel

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910210

NaVチャネルは,神経インパルスを生み出す分子である.したがってNaVチャネルは,神経系を持つ動物の起源と進化に重要な役割を果たしたと考えられる.本稿は,ヒトに至る動物の系統進化に沿ったNaV チャネルの分子進化史を概説する.

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みにれびゅうMini reviews

リン酸化が制御する出芽酵母のマイトファジーThe budding yeast mitophagy regulated by phosphorylation

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910224

マイトファジーは,ミトコンドリアをオートファジーによって選択的に分解するミトコンドリアの品質管理機構である.最近の研究から,マイトファジーを制御しているマイトファジー受容体Atg32のリン酸化分子機構が明らかになってきた.

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心臓のリズムを刻むイオンチャネル複合体の“複雑な”制御Complex regulation of KCNQ1 channel complex

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910228

心臓のK+チャネルKCNQ1は,KCNEと呼ばれる補助サブユニットによって大きく開閉の性質が変化する.KCNEによるKCNQ1チャネルの機能調節メカニズムと,KCNQ1-KCNE複合体の多様な分子構成(ストイキオメトリー)について紹介する.

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小胞体(ER)–ミトコンドリア間コンタクトサイトにおけるリン脂質輸送機構Mechanisms of phospholipid transfer at the contact sites between the ER and mitochondria

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910232

異なるオルガネラ間で,膜間コンタクトサイト(CS)が次々に見つかってきている.酵母の小胞体-ミトコンドリア間CSのERMESを例に,SMPドメインを持つCS構成因子が,リン脂質の膜間輸送を行う仕組みと,今後の課題について考察する.

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チロシンリン酸化による乳がんのクレアチン代謝制御Tyrosine phosphorylation regulates the creatine shuttle in breast cancer

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910236

がん細胞内におけるATP産生は細胞質内の解糖系により担われていると長らく信じられてきたが,筆者らの最近の研究よりHER2陽性乳がんの場合ではミトコンドリアで産生されたATPがクレアチンシャトルを介して効率よく細胞質内へと運ばれていることが明らかになった.

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常染色体劣性骨格異形成症の原因遺伝子であるグリピカン-6のヘッジホッグシグナル伝達制御機構The function of Glypican-6 and its roles in Hedgehog signaling and autosomal-recessive omodysplasia

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910241

膜結合型プロテオグリカンであるグリピカン‒6は,常染色体劣性骨格異形成症の原因遺伝子として報告された.本稿では,この病気の原因と考えられるグリピカン‒6によるヘッジホッグシグナル伝達制御機構について紹介する.

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ショウジョウバエにおいて環境依存的に生殖幹細胞増殖を制御する神経内分泌メカニズムNeuro-endocrine control of germline stem cell proliferation in response to environmental conditions in the fruit fly Drosophila melanogaster

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910246

多くの生物において,配偶子形成過程は,個体内外の環境状態の影響を受ける.本稿では,ショウジョウバエのメス生殖幹細胞の研究から近年明らかになった,環境依存的に生殖幹細胞を制御する仕組み,中でも交尾刺激を伝達する神経内分泌系の役割を概説する.

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リボソームのユビキチン化による翻訳の強制終了が新生ペプチド鎖の分解を誘導するRibosome ubiquitination triggers co-translational quality control

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910250

最近の研究では,リボソームが分子修飾されることで遺伝子発現に影響を与える例が報告されている.本稿では,翻訳停滞したリボソームのユビキチン化が翻訳の強制終了,ならびに途中まで合成された新生ペプチド鎖の分解を誘導する機構について議論する.

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人工タンパク質ナノブロック複合体の設計開発Design of artificial protein complexes of protein nano-building blocks

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910255

多くの生命活動に関わるタンパク質複合体の人工的デザインを目指して,タンパク質の対称性および自己組織化能力を活かした人工タンパク質ナノブロックを設計開発し,多様なナノ構造のタンパク質複合体を創出してきた例を紹介する.

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量子化学が解き明かすピリドキサール酵素の反応多様性Quantum Chemistry Elucidates the Catalysis Diversity of PLP-dependent Enzymes

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910260

ピリドキサールリン酸は,アミノ基転移,ラセミ化,脱炭酸などの多彩な触媒反応に関わるが,どの反応を引き出すのかを決定するのは酵素であり,補酵素を取り巻くアミノ酸残基群である.その仕組みが量子化学計算によって解き明かされつつある.

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ネクロプトーシス誘導分子RIPK3による細胞死と炎症の制御RIPK3: The crucial kinase for cell death and inflammation

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910265

RIPK3は新規炎症性細胞死ネクロプトーシスの誘導に必須のキナーゼであるが,近年それ以外にも多様な機能を持つことが明らかとなってきた.本稿ではRIPK3の分子機能と炎症性疾患との関わりについて概説したい.

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OPA1とカルジオリピンによるミトコンドリア内膜融合の制御Regulation of mitochondrial inner-membrane fusion by OPA1 and cardiolipin

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910268

ミトコンドリアの融合と分裂は,その品質管理に関与することが明らかになり,大きく注目されている.本稿では,哺乳動物におけるミトコンドリアの融合,特にOPA1とリン脂質カルジオリピンによる内膜融合の制御機構に関して我々の知見を踏まえ概説する.

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テクニカルノートTechnical note

マイクロチップが実現した脂質輸送体の1分子計測Microsystems allow single molecule analysis of phospholipid transport protein

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910272

近年,生体膜を実装したマイクロチップは,膜タンパク質の超高感度な機能解析を実現するだけでなく,ナノポアDNAシークエンサーなどの革新的なバイオ分析装置へと発展しつつある.本稿では,我々が開発したチップとともに,それらが実現した脂質輸送体の1 分子計測について紹介する.

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