♫サカナサカナサカナー サカナーを食べーるとー アタマアタマアタマー アタマが良くなるー♫ 読むだけでメロディーが浮かぶこの歌はスーパーでよくかかっていたおなじみの歌だ(井上輝彦作詞「おさかな天国」).最近,この歌を聞かなくなったが「DHAで頭が良くなる」の話はその後どうなったのだろう? 脂質を通しにくいはずの血液脳関門をDHAはどうやってくぐり抜けるのか? 必須脂肪酸はリノール酸とα-リノレン酸と教わったが,必須脂肪酸欠乏症とプロスタグランジンやDHAの関係は? 最近,プラズマローゲンやセラミドがアンチエージングサプリとして売られているが,その栄養学的価値や生理作用はどれくらいわかっているのだろう?……などなど,脂質を専門とする研究者でも整理できていなかったり,フォローできていなかったり,モヤモヤしていることはたくさんある.本特集では脂質の機能について最新の知見をそれぞれの分野の研究者にまとめていただいた.題して「ここまでわかった脂質の機能」.乞うご期待.
脂質代謝酵素の一つであるΔ6不飽和化酵素を欠損させたマウスと人工乳で新生仔を哺育する方法を組み合わせ,成長発達期に重要な多価不飽和脂肪酸を検討し,身体成長にはアラキドン酸が,脳機能の発達・維持にはドコサヘキサエン酸が必須であることが示された.
脳は脂質が豊富な臓器であり,特に多価不飽和脂肪酸は,脳の構造維持だけでなく,その機能調節を行う.本稿では,多価不飽和脂肪酸による脳の機能調節について膜の流動性,神経伝達,神経新生に対する影響を概説する.
ペルオキシソームにおける脂肪酸のβ酸化反応は多様な役割を担っている.本稿ではペルオキシソームにおける脂肪酸酸化の役割と酸化物を介するオルガネラ間での連携について紹介したい.
神経変性疾患の病理形成過程にスフィンゴ脂質が関与する分子機序が多数提案されている.アルツハイマー病とパーキンソン病におけるスフィンゴ脂質の役割について,我々のスフィンゴ脂質依存的に産生されるエクソソームに関する研究成果も合わせて紹介する.
スフィンゴ脂質は細胞膜の構成成分であり,さまざまな食品素材から日常的に摂取されているものの,他の脂質成分と比べると,食品としての機能についてはあまり情報がなかった.近年,注目され始めたスフィンゴ脂質の機能性について紹介する.
リゾリン脂質は,生体膜を構成するリン脂質から産生される.最近,全容が明らかになりつつあるリゾリン脂質の新規生理機能を中心に概説し,筆者らが発見したリゾリン脂質メディエーターのリゾプラズマローゲンについて紹介する.
N-アシルエタノールアミンは,抗炎症,鎮痛,食欲抑制などの生物活性を持つ脂質メディエーターであり,哺乳類における生合成機構は創薬の標的としても注目される.本稿では徐々に明らかとなってきているその全貌について,筆者らの研究成果を中心に概説する.
胆汁酸は核内受容体であるファルネソイドX受容体(FXR)に作用して,脂肪合成系の活性を制御する.その仕組みについて概説し,さらに脂肪合成系の制御における胆汁酸の利用価値を最近の基礎・臨床研究から考察する.
神経細胞は,機能の異なる複数の領域を細胞膜上に作ることにより,方向性を持つ情報伝達を可能にしている.こうした膜機能ドメインの形成を,ホスホリパーゼA1が行うsn-1位におけるリン脂質リモデリング反応と,その生成物であるまれなリン脂質分子種が制御する事例を紹介する.
クロマチンの構成因子であるHMGAタンパク質は,発生,がん化,細胞老化などさまざまな生理現象において重要な働きを担う.本稿では,その生理機能の生化学的基盤について,古くから最新の知見まで含めて概説する.
2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージング技術の発展により,生きた動物の体内で各種細胞がいかに活動しているかが実際に見えるようになってきた.我々はこれまでに,独自に確立した生体イメージング技術を活用して,細胞の“動き”が生命の営みを理解する上で重要な手がかりになることを見いだした.
細菌のSecDFは,プロトン駆動型のタンパク質膜透過モーターであり,その超F型,F型,I型の結晶構造が報告され,機能解析からSecDFのダイナミックな働きが明らかとなってきた.本稿では現在考えられるSecDFによる膜透過の分子機構を解説する.
がん細胞における代謝変化は知られているが,各代謝経路の変化の生物学的な意義については不明な点が多い.本稿では,脳腫瘍の一つであるグリオブラストーマにおけるグアニンヌクレオチド合成経路の変化とその生物学的意義について紹介する.
多くの真核生物のゲノム上には,トランスポゾンと呼ばれる転移性のDNA配列が数多く存在する.ヒトではL1レトロトランスポゾンが唯一,自律的に転移可能であり,種々の疾患原因にもなる転移を繰り返す.これを制御する宿主の経路について紹介する.
膜タンパク質クローディンはタイトジャンクションと上皮バリアの形成において中心的な役割を果たす.筆者らが樹立したクローディンファミリー欠失細胞の解析から見えてきたタイトジャンクションの構造と上皮バリアの新しい姿について紹介する.
転写を中核とした遺伝子のフィードバックループは本当に体内時計を駆動するのか? 我々は今回,時計遺伝子の5上流のシスエレメントに点変異を導入したマウスを世界で初めて作製し,当該配列が細胞時計および個体レベルの概日リズムに必須であることを示した.
近年,グリピカンとニューレキシンがヘパラン硫酸鎖を介してさまざまなシナプスオーガナイザーの機能を調節することがわかってきた.本稿では,これらの分子の作用機序と我々が示したショウジョウバエのシナプス可塑性におけるグリピカンの機能について紹介する.
DNAポリメラーゼによってDNAに取り込まれたリボヌクレオチドは蓄積するとゲノムに致命的な損傷を与える.本稿ではマウスの染色体上に残されたリボヌクレオチドが起こすゲノム不安定性について解説する.
植物は得られる光量が変動したときに,植物葉緑体に局在するイオン輸送体を介して吸収する光エネルギーを調節することができる.本稿では,光合成電子伝達系の舞台であるチラコイド膜で機能するイオン輸送体を中心に,最新の知見と動向を紹介する.
This page was created on 2023-12-19T07:25:03.118+09:00
This page was last modified on 2023-12-19T07:59:28.155+09:00