生化学 SEIKAGAKU
Journal of Japanese Biochemical Society

Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society

アトモスフィアAtmosphere

潜在能力

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940789
HTMLPDFEPUB3

特集「mRNAスプライシング制御の最前線と創薬への応用」の企画にあたって:企画 甲斐田大輔,吉田知之 Special Reviews
The Frontiers in mRNA Splicing Research and its Applications in Drug Development, Daisuke Kaida and Tomoyuki Yoshida (eds)

mRNAスプライシングは,イントロンと呼ばれる翻訳には関わらない部分を取り除き,翻訳の鋳型となるエクソンと呼ばれる配列どうしをつなげることで成熟型のmRNAを作る,真核生物の遺伝子発現には必須の機構である.スプライシングの発見から45年が過ぎ,精力的な研究の結果,基本的なメカニズムの理解は相当程度進んだ.また,スプライシング調節化合物の発見や,選択的スプライシングのさらなる理解,次世代シークエンス技術の発展などにより,その生理的意義や疾患との関連などの理解も進んでいる.しかしながら,いまだに数多くの疑問が残されており,また,新たな疑問も生まれ続けている.本特集では,これまでに明らかとなったスプライシング機構や疾患との関連,その生理的意義などに関する最新の知見と,スプライシング調節化合物などを用いた創薬への応用の可能性を,さまざまなバックグラウンドを持つスプライシング研究者の方々にわかりやすく解説していただいた.本特集により,スプライシング機構がいかに複雑で,想像以上に多くの生命現象の基盤となっていること,さらには,スプライシング研究の面白さやその意義を理解してもらえるのではないかと期待している.

骨髄異形成症候群(MDS)における異常スプライシング機構Mechanistic insights of aberrant splicing in Myelodysplastic Syndrome

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940797

造血幹細胞での変異により引き起こされる疾患,骨髄異形成症候群(MDS)では,スプライシング因子に高頻度で変異が入っており,異常スプライシングが起きることが疾患の原因と考えられる.本稿では,MDSでの異常スプライシング機構について概説する.

HTMLPDFEPUB3

「イントロンの長さ」の不可思議に端を発する新しいスプライシング機構の発見The mysteries of ‘intron length’ triggered the discovery of novel mechanisms of splicing

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940806

ヒトのイントロン,その長さ分布は驚異的に広い.既知の分子機構では,そのすべてのスプライシングを説明できない.非常に長い,もしくは短いイントロンに好奇心を持って始められた研究によって,新しいスプライシング分子機構の発見がもたらされた.

HTMLPDFEPUB3

スプライシング阻害とRNA輸送Splicing inhibition and RNA transport

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940814

mRNA前駆体の核内繋留機構は酵母からヒトにおいて保存されているにもかかわらず不明な点が多い.本稿では古典的な酵母の遺伝学的研究から,化学遺伝学的手法と次世代シーケンサーを組み合わせたアプローチを用いて得られた知見をもとにmRNA前駆体の核内繋留機構について概説する.

HTMLPDFEPUB3

スプライシング阻害と翻訳制御Splicing modulation-mediated translational control

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940819

近年スプライシング調節剤によって誘起される多様な翻訳制御が明らかになってきた.また,これらがスプライシング調節剤の抗がん作用と密接に関連することも示されている.本稿ではこれらに関する最新の知見について解説する.

HTMLPDFEPUB3

スプライシング異常と細胞周期停止機構Cell cycle arrest caused by splicing abnormality

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940829

現在までに,スプライシング異常やスプライシング阻害剤は細胞周期停止を引き起こすことが明らかとなっている.本稿では,スプライシング阻害剤が抗がん活性を発揮する機構の一つであるmRNAスプライシング異常による細胞周期停止に関して概説する.

HTMLPDFEPUB3

RNAスプライシング制御を標的とした創薬Drug development targeting aberrant RNA splicing

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940837

RNAスプライシング異常は遺伝性疾患の主要因の一つであり,スプライシング制御機構に合成化合物やアンチセンス核酸により介入することで遺伝性疾患を治療できる可能性がある.本稿ではそれらスプライシング異常を標的とした創薬動向を概説する.

HTMLPDFEPUB3

マイクロエクソンの取捨選択による中枢シナプス形成の調節Synaptic target selection regulated by Ptprd microexons’ splicing

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940845

近年,神経細胞において選択的に利用されるマイクロエクソンの存在が明らかになり,神経系で働くタンパク質の新たな機能調節機構として注目されている.本稿ではマイクロエクソンの選択的スプライシングによる中枢シナプス形成の調節機構について紹介する.

HTMLPDFEPUB3

神経ネットワークと可塑性を支配するダイナミックなスプライシング制御—メカニズムの理解から創薬に向けてNeuronal alternative splicing: A regulatory mechanism underlying brain network and plasticity

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940852

選択的スプライシングによる生命情報の多様性獲得は,脳のネットワーク構築と可塑性を構築する重要な仕組みである.本稿では,神経系における時空間的スプライシングに注目し,その分子メカニズムと役割に関する最近の知見および創薬可能性について紹介する.

HTMLPDFEPUB3

植物pre-mRNAスプライシングの特徴とその生理的役割Characteristics of plant pre-mRNA splicing and its physiological significance

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940861

近年,植物pre-mRNAスプライシングの特徴とその重要性を示す知見が増加しつつある.本稿ではシロイヌナズナ研究成果を中心に,pre-mRNAスプライシングが担う植物生理的役割について概説する.

HTMLPDFEPUB3

ナンセンスコドン介在的mRNA分解(NMD)と共役した選択的スプライシングによる遺伝子発現の制御Comprehensive analysis of alternative splicing coupled with nonsense-mediated mRNA decay (AS-NMD) in C. elegans

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940868

線虫のmRNAの直接シーケンシング解析で明らかとなった,3スプライス部位のAGジヌクレオチドのN6>-メチルアデノシン修飾によるS-アデノシルメチオニン合成酵素遺伝子の選択的スプライシングの間接的フィードバック制御について概説する.

HTMLPDFEPUB3

選択的スプライシングと,がんのワールブルグ効果Alternative splicing and the Warburg effect in cancer

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940875

ワールブルグ効果と密接に関連する解糖系酵素Pkmの選択的スプライシングをマウス個体レベルで固定化し,がんにおける役割を再訪した.ワールブルグ効果は,細胞自律的な意味では,腫瘍細胞のメリットにはなっていない.

HTMLPDFEPUB3

みにれびゅうMinireviews

老化性疾患におけるミトコンドリアとリソソームのクロストークMitochondrial and lysosomal crosstalk in aging diseases

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940882

ミトコンドリアは細胞内恒常性維持のためさまざまなオルガネラと相互作用することが知られている.特にミトコンドリアとリソソームの関係性に着目し,ミトコンドリア機能障害によってNAD+を介してリソソーム機能障害を引き起こす新分子機序について紹介する.

HTMLPDFEPUB3

“地上最強生物”クマムシの乾眠の分子機構の解明に挑むTowards understanding the molecular mechanisms of anhydrobiosis in tardigrades, “the strongest organisms on earth”

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940888

クマムシは,水分を失うと生命活動を一時停止した乾眠状態になり,給水すると活動を再開する能力を持っている.最近,脱水・給水状況に対応したクマムシ固有タンパク質の自発的な集合・離散が,クマムシの乾燥耐性戦略として重要である可能性を見いだした.

HTMLPDFEPUB3

窒素栄養に応答した植物の花成制御Flowering regulation in response to nitrogen availability

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940892

土壌中の窒素量は植物の花成時期を変化させるが,その分子機構は未解明な点が多い.本稿では,著者らが最近発見した転写因子FBH4のリン酸化制御による低窒素応答性花成の分子機構に関して紹介する.

HTMLPDFEPUB3

浸透圧勾配による上皮細胞シートおよび細胞外マトリクスの三次元形態形成Three-dimensional deformation of epithelial sheets on extracellular matrix induced by osmotic gradient

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940896

浸透圧は生体内に普遍的に存在する現象でありながら,発生における形態形成への寄与はほとんどわかっていない.本研究では,細胞培養系を用いて浸透圧依存的な形態形成(ドーム形成)の再現に成功し,その形成メカニズムに迫った.

HTMLPDFEPUB3

心筋細胞の若返りと増殖を制御する分子機構Molecular mechanisms regulating cardiomyocyte dedifferentiation and proliferation

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940901

ある種の魚類や両生類は心筋細胞の若返りと増殖により心臓を再生する.近年この制御機構に介入し,自己の心筋から直接再生を誘導する新たな治療法の開発が期待されている.本稿では心筋細胞の若返りと増殖を制御する分子機構について最新の知見を紹介する.

HTMLPDFEPUB3

転写活性の時間的制御を介した記憶のアップデート機構Limiting time for transcription controls memory updating

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940905

神経活動後の遺伝子発現誘導は一過的に起こり,記憶の固定化に重要である.我々はこの一過性の分子メカニズムをひも解き,遺伝子発現が一過的である意義として,記憶のアップデート機能を制限することを見いだした.

HTMLPDFEPUB3

宇宙環境がもたらす骨格筋可塑性への影響Effects of the space environment on skeletal muscle plasticity

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940910

微小重力環境は,骨格筋の可塑性を変化させることが知られている.本研究では,国際宇宙ステーションに設置された可変人工重力環境の研究プラットフォームを用いて重力環境がマウス骨格筋の可塑性に与える影響を解析した.

HTMLPDFEPUB3

Cryo-EMを用いたニューロテンシン受容体によるGタンパク質活性化機構の動態解析Cryo-EM analysis of the dynamic G-protein activation process by the neurotensin receptor 1

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940916

ニューロテンシン受容体1(NTSR1)は体温や食欲制御などに関与するGPCRである.本稿ではクライオ電子顕微鏡構造解析を通じて我々が明らかにしてきた,NTSR1によるGiタンパク質のダイナミックな活性化機構について紹介する.

HTMLPDFEPUB3

テクニカルノートTechnical note

蛍光基質を用いた簡便なグリセロホスホジエステラーゼGDE4およびGDE7の活性測定法A simple enzyme assay for glycerophosphodiesterase GDE4 and GDE7 using fluorescent substrate

doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940923

グリセロホスホジエステラーゼGDE4およびGDE7は,オートタキシンと併せてリゾホスファチジン酸産生酵素として知られている.筆者らは,市販のオートタキシン用蛍光基質を転用し,GDE4およびGDE7の簡便な活性測定法を開発したので紹介する.

HTMLPDFEPUB3

This page was created on 2023-12-19T07:25:03.118+09:00
This page was last modified on 2023-12-19T07:59:28.155+09:00