筆者らはTMEPAIとC18ORF1から構成されるTMEPAIファミリーがAR-Smadへの結合をSARAと競合することでTGF-βシグナルを抑制することを見いだした.本稿では,TMEPAIファミリーの機能と構造に関する最新の知見や疾患との関わりについて概説する.
細胞内に存在する細胞小器官の量は,細胞の需要に応じて厳密に制御されている.このような細胞小器官の量的調節機構の問題は,細胞生物学の根本的命題である.本稿では,ゴルジ体の量的調節機構であるゴルジ体ストレス応答を中心に解説する.
皮膚は多様な防御壁(バリア)を備え,外来の侵襲から生体を保護している.スフィンゴ脂質の一つセラミドとその代謝産物は,物質透過バリアの形成,また,二次情報伝達物質として,正常な皮膚の機能維持に寄与している.
ヘム鉄がシグナルになるHRIなどのヘムセンサーや,ヘム鉄が酸素のセンシング部位になるEcDOS,YddV,AfGcHKなどの酸素センサーについて著者のグループで得られた研究結果を概説するとともに,周辺分野で得られた知見も紹介する.
ホスホリパーゼC(PLC)はイノシトールリン脂質代謝系においてセカンドメッセンジャー産生のトリガーとなる酵素である.遺伝子改変動物の解析により,PLCの多様な生理的役割が示されてきた.本稿ではPLCの活性制御機構と生理機能について概説する.
hexokinase 2は,インスリン感受性臓器の主要なヘキソキナーゼアイソザイムであり,グルコース代謝のみならず,Akt/mTORC1とのクロストークにより,ミトコンドリア保護作用,オートファジー制御などさまざまな生理作用を制御する.
無細胞タンパク質合成系は,生細胞を用いたタンパク質生産に代わる技術である.生化学での無細胞タンパク質合成系による高品質なタンパク質生産技術の現状を解説する.さらに,合成生物学への無細胞タンパク質合成系への展開について論じる.
筆者は微生物のゲノム情報を活用し,一次代謝ではメナキノンやペプチドグリカンの新規生合成酵素・経路を発見し,二次代謝では放線菌や糸状菌が生産する生理活性物質の詳細な生合成機構の解明を行ってきた.本稿では,これらの詳細について紹介したい.
近年新たに同定されたASK3というキナーゼは浸透圧ストレスに対して独特な両方向性の活性変化を示すことが明らかになった.本稿では,生体の浸透圧ストレス応答においてASK3が制御するシグナル伝達経路と生理的役割,疾患との関連について紹介する.
NSEはニューロン特異的に発現する解糖系酵素であるが,炎症があるとニューロンからグリア細胞へと発現パターンが変化することを見いだした.血中や髄液中NSEレベルはニューロン損傷の指標として臨床現場で用いられているが,病態の再考が必要であろう.
フェロモンを介した性行動は,多くの生物に共通する根源的な嗅覚行動である.本研究ではゼブラフィッシュを用い,性フェロモンであるプロスタグランジンF2αを特異的に認識する嗅覚受容体を同定し,魚類における求愛行動発現のメカニズムを明らかにした.
膵β細胞からのインスリン分泌は血糖調節に重要な役割を果たし,その破綻は糖尿病へとつながる.本稿では細胞内小胞輸送や開口放出において重要な役割を果たすVAMPファミリータンパク質の膵β細胞における機能について我々の最近の研究を中心に紹介する.
水疱性口内炎ウイルス(VSV)を用いたシュードタイプウイルスシステムは,主に目的とするウイルスの細胞侵入機構の解析に用いられている.簡便かつ迅速なシステムであるため,さまざまな応用がなされており,本稿ではこれらについての現状を紹介する.
上皮細胞における極性輸送の制御機構について,低分子量Gタンパク質Rabを中心にこれまでの知見をまとめるとともに,最近当研究室で行われたpodocalyxin分子のapical面への極性輸送を担うRabの網羅的な解析結果を紹介する.
グリコサミノグリカン多糖鎖をコアタンパク質に橋渡しする四糖構造の合成に関わる糖転移酵素の変異により,遺伝性の骨や皮膚,結合組織,心臓の形成不全を発症する.本稿では,その遺伝性疾患「プロテオグリカンリンカー病」について概説する.
糖鎖の生物学的機能解析はさまざまなライフサイエンス分野との融合研究として新しい時代を迎えつつある.本稿では炎症性腸疾患におけるT細胞の糖鎖機能とブタ型糖鎖ワクチンを使った膵がん免疫治療を中心に紹介し,糖鎖治療の可能性についても言及する.
多価不飽和脂肪酸(PUFA)は脳形成や脳機能に重要な栄養素である.この50年におけるPUFA摂取バランスの変化は著しく,多くの関心を集めている.本稿では,偏ったPUFA摂取による脳形成・脳機能への影響について,最近の我々の知見を中心に紹介する.
繊毛内タンパク質輸送複合体IFT-B は16サブユニットからなる巨大な複合体である.本稿では,タンパク質間相互作用を簡便かつ迅速に調べることができるVIPアッセイによって明らかとなったIFT-B 複合体の全体構造について概説する.
CNC-小Mafへテロ二量体とMafホモ二量体は,標的とするDNAモチーフのわずかな違いを正確に認識する.このようなモチーフ認識には,CNC群転写因子とMaf群転写因子のDNA結合ドメインにおける一つのアミノ酸残基の違いが重要である.
ミトコンドリアを構成するタンパク質のほとんどは細胞質で合成され,ミトコンドリアへと取り込まれる.近年我々が明らかにした,ミトコンドリアタンパク質の搬入孔として機能するTOM複合体の分子形態および機能について解説する.
ROCOファミリーキナーゼLRRK1はGTPaseドメインとMAPKKキナーゼ様ドメインをもつユニークな分子である.最近,我々はLRRK1が間期の細胞では受容体チロシンキナーゼの細胞内輸送に,分裂期の細胞では中心体からの微小管形成に機能していることを明らかにしたので紹介したい.
生体内の糖鎖はクラスターを形成することでタンパク質との相互作用を可能にする仕組みを持つ.コンドロイチン硫酸はこのクラスター効果によりコラーゲンに結合することができる.さらにコンドロイチン硫酸クラスターの糖鎖間の結合が新たに見いだされた.
細胞内では,多数のタンパク質が複雑で巨大な相互作用ネットワークを形成し,種々の細胞機能の発現とその制御に関与している.本稿では,タンパク質を人工的に改変し,それを用いて特定のタンパク質間相互作用の機能を解析する方法を紹介する.
接着分子インテグリンはN結合型糖鎖の修飾部位を多数持ち,糖鎖変化の影響を鋭敏に受ける.本稿では,インテグリンの糖鎖リモデリングによる機能調節,がん細胞での糖鎖変化の機構,といったインテグリンの糖鎖修飾部位に着目した研究について紹介する.
AGIAタグは,ドーパミンD1受容体に対する高親和性ウサギモノクローナル抗体とそのエピトープを基に開発したペプチドタグであり,翻訳後修飾を受ける残基を含まないため,標的タンパク質の高感度検出や免疫沈降など細胞生物学実験の幅広い利用に最適である.
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