哺乳類の生後発達期においては,神経活動に依存した神経回路の再編成によって,より精緻で機能的な神経回路が作られる.本稿では,生後発達期嗅球の僧帽細胞で 生じる樹状突起刈り込みにフォーカスし,シナプス競合と樹状突起刈り込みの分子機構について論じる.
タンパク質合成において,tRNAのアンチコドン修飾がコドンを正確にかつ効率よく 解読するために重要な役割を果たす.近年,tRNA修飾がコドンを認識する分子基盤が明らかになり,翻訳速度の制御がmRNAの安定性やプロテオスタシスに関与することも判明した.本稿では,tRNA修飾の機能と最新の知見を概観する.
超硫黄分子は,分子内に過剰な硫黄原子が付加した硫黄化合物で,太古の地球から生物を支えてきた生命素子である.本稿では,光合成細菌における硫化水素依存的な光合成の制御系から明らかになった超硫黄分子応答機構について,今後の展開とともに紹介する.
すべての血液細胞へと分化できる造血幹細胞は,さまざまな状況で代謝調節を介して自身の機能を発揮する.本稿では単一細胞代謝解析技術を含む統合的なアプローチを活用して見いだされてきた造血幹細胞のエネルギー代謝の柔軟性の実態と分子機構について紹介する.
増殖因子によって引き起こされる受容体型チロシンキナーゼを含むエンドサイトーシス小胞の生成と輸送という生体膜の動態が,細胞外グルコースの輸送と解糖系酵素群の局在化に寄与し,細胞糖代謝の動的な制御を担うことが明らかとなった.
本稿では,核輸送分子として知られるImportin α4(別名KPNA4)の遺伝子欠損マウスが統合失調症様の行動異常を発症する発見を端緒に,Importin α4の核輸送とは異なる新たな機能が脳の恒常性維持に寄与する分子機序について解説する.
管状組織形成には周方向・等間隔パターンの細胞骨格が重要である.我々は気管細胞において自己組織化されるアクチンナノクラスターを発見し,これらが内腔の拡張に伴い周方向へ融合することで,周方向・等間隔のアクチンパターンを形成することを見いだした.
ゴルジ体は,新規合成された膜・分泌タンパク質を細胞内外の適材適所に正しく送達する膜交通システムの中核である.本稿では,筆者らが超解像ライブイメージングによって明らかにした,出芽酵母におけるゴルジ体槽成熟の時空間動態について概説する.
目的遺伝子の機能解析法として近年,オーキシンデグロン法を代表とするコンディショナルデグロン法が注目される.本稿ではその有効性や種類による違いを解説したのち,近年報告した2種のデグロン技術を組み合わせた技術拡張法を紹介する.
反応性アストロサイトは中枢神経系の病態制御において重要な役割を担う.本稿では,脳損傷後に反応性アストロサイトでWnt5a受容体であるRor2の発現が上昇するメカニズムと,それに基づくWnt5a-Ror2 シグナルによる神経保護機構を解説する.
従来,遺伝情報の伝達役であるRNAは短命な分子であると考えられてきた.本研究では,げっ歯類脳の一部細胞でRNAが生涯にわたり維持されることを見いだした.この長寿RNAの生理的機能はいまだに不明な点が多いが,脳の機能維持および老化研究に新たな方向性を拓いた.
ダイズが根圏に分泌するイソフラボンを代謝する遺伝子クラスターを土壌細菌から見いだした.本遺伝子クラスターは腸内細菌由来の還元的な代謝経路とは異なり, 酸化的にイソフラボンを分解し,土壌細菌のダイズ根圏への適応に関わることが示唆される.
Ca2+やcAMPは,神経活動や記憶形成に関与する重要な細胞内セカンドメッセンジャーである.本稿では,生体脳ニューロンにおけるCa2+とcAMPの動態を可視化する蛍光プローブや生体イメージング技術を概説する.
Gタンパク質共役型受容体GPR30が重炭酸イオンによって活性化され,血流を制御して脳虚血再灌流障害に関与することが明らかになった.これら一連の発見により,酸塩基平衡による細胞機能制御の新たな側面が見いだされ,画期的な脳梗塞治療への期待が高まっている.
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