会誌「生化学」は日本生化学会の設立と同年である1925年(大正14年)10月に創刊され,2025年で創刊100周年を迎える運びとなりました.これを記念し,生化学会の100年を振り返る特別寄稿を企画いたしました.97巻1号より掲載中の歴代大会会頭による「鑑往知来~生化学会100年の軌跡」に続き,98巻1号から歴代会長による「特別総説」を掲載いたします.なお,特別寄稿のバックナンバーは「日本生化学会100周年記念ウェブサイト」(https://www.jbsoc.or.jp/100th_aniv/) でご覧いただけます.
リアノジン受容体による生理的な小胞体Ca2+放出は結合膜構造を構築するジャンクトフィリンやカウンターイオン動態に寄与するTRICチャネルなどを要求し,これら分子群の異常はCa2+ストア機能障害に起因するさまざまな疾患を引き起こす.
転移の過程で,がん細胞は幾度となく活性酸素種の蓄積による酸化ストレスに直面するため,いかに回避,適応,もしくは活用するかが転移の成否を左右する.本稿では一連の転移過程においてがん細胞が経験する活性酸素種の産生源とその影響について概説する.
フェロトーシスの誘導と阻害は,がんや神経変性疾患,臓器障害の新しい治療法として注目されており,その誘導メカニズムの解明が重要となっている.本稿では,蛍光プローブを用いたフェロトーシス誘導起点の同定について,最近の知見を紹介する.
鉄はほぼすべての地球上に存在する生物が保有しており,重要な生命機能を担う重要な金属種である.本稿では,細胞内,体内における鉄(II)イオン・ヘムを検出できる蛍光プローブ・化学プローブについて,この10年程度の技術開発と応用例を中心に紹介する.
DNA損傷応答研究の進展を概説し,DNA障害型抗がん剤の効果を高めるSLFN11に焦点を当てて,効果予測・耐性克服・副作用低減に向けた精密化学療法の展望を示す.
細胞表面へのホスファチジルセリン露出に関与する膜タンパク質,リン脂質スクランブラーゼはどのようにリン脂質を認識し輸送するのか,その活性はいかにして制御されるのか? 立体構造解析を中心とした研究により,その作動原理の一端が明らかとなってきた.
超予後不良希少疾患であるアグレッシブNK白血病のモデルマウスを作出し,新規治療標的トランスフェリン受容体を同定した.トランスフェリンは鉄の担体であるが,その作用機序解析から新規の鉄代謝メカニズムが明らかとなった.臨床治験も進行中である.
Kennedy経路におけるコリン/エタノールアミンリン脂質合成酵素について,細胞内局在と基質特異性を解析し,新たな脂質中間体の輸送経路を見いだした.さらに,基質特異性を規定する構造的要因を明らかにした.
DNA損傷トレランスは,DNA複製阻害を解消することによりゲノム安定性の維持に寄与する.本稿では,PCNAのユビキチン化によって制御されるDNA損傷トレランス機構について概説し,筆者らが新規因子として報告したRFWD3についても紹介する.
造血幹細胞の発生研究は,前駆細胞を試験管内で分化誘導できる培養技術の進展により大きく前進した.本稿では,培養技術の確立過程と,それにより明らかになった造血幹細胞発生の分子機構について概説する.
CRISPR ATAC-seeスクリーニングにより,クロマチンアクセシビリティ制御因子TFDP1を同定した.TFDP1を摂動するとゲノム全体のアクセシビリティが上昇し,これを応用展開することでゲノム編集やiPS細胞リプログラミングの効率を改善させることに成功した.
植物細胞壁に含まれるヘミセルロースは,セルロースとの相互作用を介して細胞壁の構築に寄与している.本稿では,ヘミセルロースであるキシランとマンナンの糖鎖構造と,セルロースとの相互作用の関係についての最新の知見を概説する.
リン脂質の多様性が,さまざまな生命現象や病態に関与することが注目されている.本稿では,筆者らが近年報告した,リゾリン脂質アシル転移酵素LPLAT10を肝臓特異的に高発現させることで,グルコース依存性インスリン分泌が促進することを見いだした研究について紹介する.
植物のフェレドキシンとフェレドキシン:NADP(H)酸化還元酵素には,それぞれ「葉型」と「根型」と呼ばれるアイソフォームが存在する.本稿では,両タンパク質のアイソフォーム間の特性および生理機能の違いについて,最近の著者らの研究成果を交えて概説する.
核酸は周辺環境によってその構造を大きく変化させる.本稿では,擬似細胞系SHELLを用いて解明された,疾患の進行過程における分子環境が核酸構造を変化させる機構について解説し,このような変化が生命現象に及ぼす影響を考察する.
細菌は効率的に鉄を獲得するために,外界の鉄を「感知」する.本稿では,分子モーターのプロトン駆動力依存的な力学的作用が膜タンパク質の多段階切断を誘導し,それによって鉄の情報が外界から細胞内へと伝達される一連のメカニズムを解説する.
インバリアント鎖の発現量が低下すると,ネオセルフと総称される異常な自己抗原がMHCクラスII分子に提示される.T細胞はセルフとネオセルフの識別能を有しており,自己分子であるネオセルフが異物と認識されることで免疫寛容の破綻が起こると考えられた.
ノンコーディングRNAが特定の前駆体mRNAを認識し,スプライシング因子を局所的に配置してエクソン選択を制御する仕組みを,Saf・PLANE・5S-OTそして筆者らが見いだした4.5SHを中心に概説する.
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